− 閑話・夜 − ページ31
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同じ夜空を照らすものでも
月はあまり好きではなかった。
一生懸命な星の輝きを、かき消してしまうから。
◆ ◇ ◆
眠れない夜。
その日は大きな月が出ていた。
一人。…の、はずが。
床板のきしむ音で、ふと現実に引き戻る。
『…悠仁？』
見間違うはずもないシルエット。
いつかと同じ場面を懐かしみたいところだが、
…しかし。雰囲気が違う。
気のせいではなく、何か決定的に。
『悠仁…じゃ、ないですね。あなた』
自ずと警戒を強める。
そうなれば答えは一つしかない。
ほの暗い影が笑って。
「そう怯えるな、小娘｣
『…宿儺』
両面宿儺。
悠仁の内に宿る呪いの王。
でも普段は出てこないものと聞いていた。
肉体の主導権を握るのはごく稀だと。
『何を、してるんですか。悠仁の体を乗っ取って』
自然と身構えようとする体。
武器はない。丸腰。
「よせ。お前では俺に勝てん｣
『そんなのは、わかってます。
質問に答えてください』
「質問？ …あぁ、用件か。
見ての通りだ。お前に用がある｣
『私に…？』
「正確にはお前の眼だな｣
それから宿儺は
ふむ、としばらく私の顔を眺めて。
スッと視界から姿を消した。
『…！？』
同時、目元が何かに覆われ。
突如迫る恐怖にひゅっと喉から掠れた音が鳴る。
これはたぶん手だ。
宿儺の手のひらが、私の眼を隠している。
『な、にを…！』
「騒ぐな。お前を害す気はない｣
…と。そのように言うのは本当らしく。
ただ数秒の後、何事もなく視界は解放された。
しかし今度はすぐに、ぐいと顎が引き上げられる。
血のような赤色の目。
それがじいっとこちらを見つめて
ほう、と悦に入る。
「光の有無で色の変わる瞳……“青漆”か｣
『…何か知ってるんですか』
「いや、知らん｣
パッと手が離れた。呆気にとられるよりも早く。
無理やり上げられた顎をさすりながら
近づきすぎた距離を広げる。
『あなたでも知らないことがあるんですね』
「知らぬとも。…しかしだ、小娘。
少なくともおまえには奇妙な縁があるらしい｣
『この目の関係で、ですか』
「さてな。俺の知ったことではない｣
用が済んだとばかりに、王はさっさと背を向けて。
そして一度、こちらを振り返る。
「せいぜい足掻け、漆葉｣
愉悦を含んだ声でそう言い残し
あっという間に、音もなく去って行った。
『名前………』
奇妙な遭遇。
謎は手つかずのまま。
夜は、ゆっくり更けていく。
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (
レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか？できれば五条悟オチでお願い出来ますか？続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです！続き期待してます！ (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Sn | 作成日時：2021年7月24日 16時
