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− 閑話 − ページ18

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とある夕方。


「ねえ、ずっと気になってたんだけど」


未だ外出禁令が解除されない漆葉の部屋に
すっかり入り浸っている恵と野薔薇。

ふと野薔薇が話題を挙げる。


「なんだ」

「アンタじゃないわよ。
 漆葉、目の色なんか変わってない? 気のせい?」

『あ、それなら変わってると思うよ』

「ふーん………って、はぁ!?」


野薔薇は読んでいた雑誌を床に叩きつける。
恵が不快そうに眉根を寄せた。


「釘崎うるさい」

「アンタもなんで平然としてんのよ」

「別に。知ってたから」

「じゃあどういうこと?」


手元の文庫本から顔を上げた恵。

そのまま漆葉へと視線を投げると
彼女は微笑んで、緩やかに頷いた。


「……はぁ」

「何よ今のため息」

「…色が変わるってのは本当らしい。
 “光の加減で見え方が変わるって言うより
 瞳自体の色が変わってる”とかなんとか……」

「余計不思議さが増したんだけど」


野薔薇はもう一度漆葉の顔を見やる。

初対面の時は確か
はるかな海を思わせる紺青色だった

でも今は、新緑を映したような翠色。


『鏡見るたびに変わってたりするから楽しいよ』

「何、そんなにしょっちゅう変わるもの?」

「“自然光に当たるとだいたい変わる。
 紫外線に反応してるってのが一番無難な仮説で、
 可能性としても高い”」

「……アンタ、やけに詳しいわね」

「俺じゃない。全部五条先生が調べた」

「うわ、聞きたくなかった。
 しかも結局分かってないじゃない。目の真相」

「あの人の眼でわかんないならもう無理だろ」

「そういうもの?」

「そういうものだ。残念ながらな」

「漆葉はそれでいいわけ?」

『うん。特に害はないし、いいかなって。
 こうやって話のタネにもなるからね』


そう言うと漆葉はさりげなく視線を逸らした。
そして何かをためらってから、再び口を開く。


『悠仁とも…同じような話をしたんだよ。
 初めて会った日に。ね、恵?』

「そんなこともあったな」

『まあ、説明はやっぱり恵に丸投げだったんだけど』

「自分のことに興味なさすぎでしょアンタ」


少し、静かな時間があって。
さらに一継ぎの間の後に。


「……鍋、食べたくなってきたわ」

「あれか? 虎杖の遺作」

『遺作?』

「肉団子入りの寄せ鍋。なかなか美味いわよ」

「季節感おかしいけどな」

『え、食べてみたい』

「じゃあ漆葉の完全復帰祝いはそれで」


そうして、なんてことない約束を交わして
三人は笑い合った。



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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時

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