検索窓
今日:12 hit、昨日:32 hit、合計:178,330 hit

11.残酷 ページ12

.



残酷、と。
そう言い切ってもいい。



◇ ◆ ◇




「あれ、漆葉じゃん」

『…虎杖君』


眠れない夜。
その日、虎杖君と遭遇したのは偶然だった。


「何してんの?」

『……星を見てた。眠れなくて』

「星?」


夜空を仰ぐ私の隣に立ち、彼もまた空を仰ぐ。
すぐに感嘆の声が上がった。


「へー、結構綺麗に見える」

『……』

「漆葉は星、好きなのか?」

『うん』

「ふーん…」


揃って星を見上げ、暫しの静寂に浸る。

ふと、視線がこちらを向いているのを感じて
光から目を離した。


『虎杖君?』

「漆葉ってさ、家族とかいる?」


きゅっと胸が締まる。
それは、ほとんど反射反応。

動揺を驚きに変換して向き直ってみると、しかし。
彼の表情に悪い心はないように見えた。


『…うん。いた(・・)よ。
 優しくて綺麗な姉が、一人。
 もうほとんど覚えてないけど』

「そっか。……悪い、変なこと聞いた」

『どうして急に?』

「うーん。なんだろう、なんか……
 寂しそうに、見えた気がした」

『えっ。そう?』

「い、いやいや! わかんねぇけど」


ぶんぶんと手を振って譲歩する彼。

この人に悪意はない。
そのとき心底そう感じて、思わず笑いがこぼれた。


『そんなに否定しなくても』

「じゃあ、寂しい?」

『うーん。私にもわかんない』


でもそんなに気にしないで、と
緩んだ表情を向ける。

彼も、それで引き下がるかと思いきや…しかし。


「でも、漆葉には仲間がいるじゃん?
 俺も、伏黒も、釘崎も。あと五条先生も。

 頼もしいかは…別として。みんな味方だ。
 頼れるもんには頼ろーぜ」

『……慰めて、くれてる?』

「あー、慰めるっつーか…
 余計なお世話だってわかってるけどさ」


予想外。
でも、確かに温度のある言葉。

その一瞬、彼という人間の片鱗を
唐突に理解できたような、気がした。


『…ありがとう。虎杖君』

「お、おう。それと“虎杖”でいいよ。
 ここの人みんな呼び捨てだし」

『じゃあ──』


一瞬、思い留まり。
たまたま呼びやすかった方を、口にする。


『…うん。ありがとう、悠仁』


びっくりした顔が垣間見えた。

それを見た私が笑うと、彼もまた笑い。
夜らしくない軽やかな笑い声が、星空に溶けていく。

眠れない夜に感謝したのは初めてだった。




◇ ◆ ◇




……。


世界は、残酷だ。



あたたかく、やさしい人。


そんな彼が。
私の知らない任務中に、死んだ。



.

12.現実→←10.2割の努力



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (98 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
323人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。