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10.2割の努力 ページ11

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呪術世界において
才能が8割、というのは誇張でもなんでもない。

紛うことなき事実。


それを嫌と言うほど思い知らされたのが
この一ヶ月間だった。






◇ ◆ ◇


『…あ、れ』

「おはよう、A」

『五条…先生?』

「意識はちゃんとしてるね。
 君、窓ガラス突き破って落ちてきたんだよ。
 覚えてる?」

『え、……あ、覚えてます。
 帰ろうとしたら声が聞こえて、それで──』

「単独行動を?」

『……すみません』

「あはは、なんで謝るの」

『怒ってる気がしたので……』

「え〜? 怒ってないよ?」

『嘘ですね。先生は怒ってます』


漆葉は、はっきりとそう断じる。

しばらくきょとんとしたような間があり。
やがて五条の唇が綺麗な弧を描いた。


「どうして?」

『五条さん、いつも私が勝手なことすると
 そうやって静かに怒るんです』

「…わかってる癖に、なんでやっちゃうのかなぁ」


口調は変わらずとも、多分にトゲを含んだ言葉。

ほらやっぱり怒ってる、と
漆葉の頭に浮かんだのはそれだった。


「あと、この際言っておくけど
 呪術師なんてやめといた方がいいよ?
 どうせろくでもないんだから」

『それ先生が言うんですか。最強なのに』

「…まあね」


才能や努力は言うまでもない。

けれど呪術師として立つためには
常人離れした精神力もまた必須級。

まともな人間には、まず無理だ。


やりがいも志もなく続けていられるほど
呪術師という仕事は甘くない。


『ふーん、分かりました。
 そういう見方もあるんだって思っておきます』


だと言うのに、この子は。


『だからってやめたりしませんけどね。
 もう決めたことですから』


微かな笑みをたたえて
きっぱりと言い切ってしまうのだからタチが悪い。

本当に。


「相変わらずだね〜……」

『ダメ、とか言ったりします?』

「いーや? むしろ安心したよ」


空気が和らぎ、漆葉は密かに息をつく。
今回は大事にはならなさそう。



『……ところで、先生?』

「ん?」

『なんでこの運び方なんですか』

「いやー偶然だけど、これが運びやすくてさ〜」

『……。本音をどうぞ』

「こっちの方が顔よく見えるな〜と思って♡」

『…先生』

「な〜に、A?」


花が舞いそうなほどニコニコしはじめた五条に
漆葉はこの一ヶ月で何十回目の台詞を突き付ける。


『私、生徒ですけど』

「うん。知ってるよ?」

『……』


求む、倫理観。


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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時

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