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1.その日 ページ2

.


何がどうしてそうなったのか、
私にはもうわからない。



◇ ◆ ◇



「A! 誕生日おめでとうー!」

目隠し越しでもわかる満面の笑みを浮かべながら
その日、五条さんは現れた。

2018年。何度目かの誕生日の夜。



この人──“五条悟”と言えば
とある界隈では知らぬ者なしの有名人である。
容姿、家柄、実力、どれをとっても最強の呪術師。


それから私にとっては
親代わり、とも呼べる存在だった。

奇妙なことに。



ハイスペックがゆえに多忙な人で
何週間も会えないことなんてザラ。

それなのに毎年、誕生日は必ず祝いに来てくれる。
たぶんいい人なんだと思う。


「16だっけ?」

『はい。おかげさまで』

「早いねぇ。ちょっと前はあんなに小さかったのに」

『いつの話ですか。それ』


買ってきてくれたホールケーキをつつきながら
他愛もない話をする。

穏やかで、貴重な時間。
ほんの少しだけ特別な日の、ささやかな思い出。
そうなるはずだった記憶。



「あっ、そうそう。これ。
 誕生日おめでとうのプレゼント」


脈絡なく、
いつもと変わらない笑顔でひょいと渡されたのは
箱でもなく、包みでもなく、ぺらぺらの紙一枚。

本人曰くプレゼント、らしいが。


『紙、ですね』

「ただの紙じゃないよ〜?
 あ、返品はなしね」


怪しい。
何かあるのは違いない。
意外と子どもっぽい所がある人だ、よく知っている。

それでも素直に受け取ったのは
拒否するだけの理由がなかったから。

それと、純粋な好奇心。


『まさか手紙だったりします、か───』




衝撃はいつでも突然に。




紙自体はただのコピー用紙で、
何の変哲もない書類だった。

異質なのは先頭に印刷された3文字。


数年先まで縁遠いはずの文言。



『婚姻、届……?』

「そう、よく読めました!」


小さな子どもを褒めるような言い方で
パチパチと手を叩く五条さん。


『冗談ですよね』

「冗談? いやいや、本気だってば」

『本気、って』


とんでもないことを言い出した目の前の人を
呆然と見つめる。


「そ。本気。」


ただ、特に変わらない様子で
軽やかに言う五条さんの声のトーンは
確かに本物で。



「結婚しようか、A。」


聞いたこともないハンサムボイスに
思考がぱたりと停止する。

嘘か、本当か。
探り始める余裕なんて微塵もない。


くらり、と目眩の気配がした。



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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時

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