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「ねぇ、翔太」
「好きだよ」
「翔太は、」
眉を八の字にして、彼女は口を噤む。
あぁ、夢だ。
いつもいつも、この夢はここまでで。
この先、俺に言い訳をさせる余地もない。
痛くて、上手く呼吸が出来なくて、
「っ、はぁ、、はぁ、」
だから夢から覚めてしまう。
無意識に横のAを探す癖は、いつまでたっても抜けない。
温もりも何もかもなくなったそこは、ただ寂しさを感じさせるだけ。
呼吸が出来ない自分と
呼吸が出来るようになったA。
「私たち、似てるね」
なんて笑いあった日々はいつから無くなってたんだろうか、
間違いはたったのひとつだった。
されど、大きなひとつでもあった。
「翔太、？」
「っA」
「誰、その人、」
手を離しても、もう遅い
「違う」
「…違うって何、？」
「違うんだよ、ほんとに」
悪いのは全部俺で。
どうしようもなく、俺が悪かった。
「ねぇ、翔太」
「好きだよ」
「でも、翔太は私の事好きじゃなくなったんだね」
「…別れてください」
涙を溜めて流すまいと堪える彼女に、俺が寄り添うことはもう許されなくて。
たった一言。
言い方が分からなかった。
たった一言。
“ごめんなさい” の言い方が。
彼女がいなくなった部屋
「ねぇ、翔太見て！可愛い花瓶があって買っちゃった〜」
「ふふっほんとに翔太は料理下手だね。涼太くんと大違い」
「これ、くれるの？っありがと！！」
消すには思い出が多すぎる。
出来ることなら、
あの日まで巻き戻してほしい。
声が聴きたい、
やり直したい、
さようならも、全て消して、
でも知ってんだよ
「どうしようもねぇことくらい、」
とっくに取り返しはつかない。
“Aと付き合ったよ”
彼女はもう先に進んでしまったのだから。
渡辺翔太 / cassette tape
＿＿＿＿＿＿＿＿
クズな渡辺もタイプなのですが、こういった後悔する渡辺もタイプです。
一夜の間違い。でも大きな間違い。
巻き戻してcassette tapeと縋る渡辺見てみたい。
ストの中でもものすごく好きな楽曲です。
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作者名：午前12:00 | 作成日時：2022年10月2日 23時
