〇し合い (ページ9)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:19,756 hit

譲りあい＿white ページ9

．

「れ、」

たまに違う人の名前を呼んでいるのは知っていた。

“れ” さん

“俺”はきっと俺だけじゃなくて、彼女にはいっぱいいることも知っていた。

それでも、連絡が来るのが嬉しくて、

「会いたい」
なんて言われれば、たとえその先にコウイがなくても許せた。

彼女には忘れられない人がいるだろうことも許せた。

許してしまうほどの、“感情”を俺は彼女に抱いていた。

･

ギュッと俺に抱きつく彼女は腕の中にすっぽり収まるサイズ。

夢の中で寂しいのか、俺の背中に回った腕は強さを増すばかり。
そんな時に大体寝言で出てくるのが、

「…たぁ、」

“た” さん

調べようと思えば、きっと簡単に見つかると思う。

“た”さん

と

“れ”さん

多分ね、
“た” が忘れられない人。
“れ” が俺と同じかな？きっとカラダの関係。

そんくらいの詮索はさせてよ。

詮索？
いや、直感を働かせてみる？

どんな男で今何してるのかなんて調べないからさ。

その手段は取りたくないという信念もいっちょ前にあるし。

顔も名前も知らない男でも、きっと魔性の彼女に捕まった同じ男だから。

親近感と共に、その名前は胸の内に秘めておく。

だって、

きっと。知ってしまったら、探しだして＿＿＿＿＿＿