夢に向けてのオーバーチュア.1 ページ1
受かった。
大手芸能事務所のオーディションに。
「…っ、やったあ！！！！！！」
何百人、何千人のうちからたった1人選ばれたのが自分だなんて、実感が湧かないけれど嬉しいものは嬉しい。
兆野実緒は決して新しいとは言えない、狭めのアパートの一室で思わず叫んだ。
安定のしない職業だと言う両親の猛反対に啖呵を切って、半ば家出に近い形で一人暮らしを始め、アイドルのオーディションを受けた実緒。その全てが身を結んだ事実に涙が溢れそうになった。
アイドルに、なれる。昔から憧れてやまなかったアイドルに。
近い将来、自分が観客として訪れたような大きな舞台で歌って踊ることを想像して、顔が緩んでしまう。
しかし、彼女のデビューは本人が望んでいたものとは大きく異なった形だった。
「デュオ？」
「そうだ。もう1人メンバーがいる」
事務所に呼び出されたかと思うと、事務所の社長である八乙女宗助直々にその内容を伝えられた実緒。
募集要項には女性新人アイドルの募集、としか書かれていなかった。ソロで活動するものだとばかり思っていたのだ。だって、オーディションで選ばれたのは自分1人なのだから。
「もう1人は億宮A。…彼奴は特別なんだ。CDは渡すがくれぐれも厳重に扱え」
「はあ……」
渡されたCDには、彼女の歌が入っているらしい。妙に高圧的な宗助の態度に、これからこの人の下につくのかと実緒は顔を歪めた。
極秘扱いされるまだ会ったことのない彼女に少なからず嫌悪感を抱く実緒。
自分だって多くのアイドル志望者の中を勝ち抜いてきた。それが、自分の自信でありプライドだった。そんな自分より特別で重要だと扱われる人物に嫌な感情を抱かない方が可笑しい。
それに、実緒は実家を出ている。
大学こそ家を出ていなかった頃、両親が学費を払ってくれたため行けているが、無一文に近い状態の彼女は、自分の生活を保証できるだけのお金を自力で稼がなければならなかった。
自分の人生を左右するのが名ばかりの逸材。前途多難だと実緒は心底ため息をついた。
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ドーナツ(プロフ) - 高沢さん» ありがとうございます〜！こちらはかなり不定期更新となってしまうと思いますが、本編共々よろしくお願い致します！ (2020年5月30日 6時) (
レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
高沢 - 番外編…！ありがとうございます！！楽しみにしています！！ (2020年5月29日 23時) (レス) id: a364a1dba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ドーナツ | 作成日時：2020年5月28日 21時
