1-1 ページ2
家族を捨てた。
自分からその道を選んだとはいえ、未練がない訳じゃない。
罪悪感に駆られる時もある。
だからか、その日は酷く寝付けなかった。
(まだ2時…)
隣に弟のいないベッドはとても広く感じた。
弟は入退院を繰り返していたから、その事実にも慣れていたはずなのに。今までは心だけでも直ぐ隣に当たり前のようにあった温もりが消えるだけでこんなに不安になるなんて思っても見なかった。
音を奏でたい。天が弟の陸に残してやれた、たったひとつのものだから。それで気を紛らわせようとした。
自室を出て外に出ようとする。薄暗い廊下を歩くことに天は一瞬躊躇したが、今晩はまだましだった。
満月の光が窓から差し込んでいたから。
(陸は、月の光があっても怖がってたっけ。)
なんて、もう会えもしない弟の事を考えて口元を緩ませてしまう。でも、直ぐにこれ以上考えてはいけないと考える事をやめた。
自分はもう九条なのだから。
するとそこで気が付いた。外から既に音が聞こえて居ることに。
一音ずつ丁寧に奏でられる優しい歌声だった。
軽やかで、鮮やかに響くその音は天の耳を魅了させた。
もっと近くで聞きたくて、天は吸い込まれる様に外に出た。
聞いたことのないメロディー。でもそのメロディーは何処か懐かしくて、いつまでも聞いていられる。そんな音。
音の方に目を向けると綺麗な少女がいた。
桜色の唇、艶やかなコバルトブルーの猫目。グレーと表すのか、水色と呼ぶには色素の薄いサラサラの髪、白くて陶器のように華奢な身体は指一本触れると壊れてしまいそうだ。
女性というには幼い、たがその少女には、幼いとは言えない色っぽさがあった。
(この人は誰だろうか……)
初対面なのに。他人のことをこんなに深く知りたいと思ったことはなかった。初めて、近付きたいと思った。知りたいと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 162人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「アイドリッシュセブン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ドーナツ(プロフ) - わあ…！ありがとうございます〜！！お友達さんとは仲良くなれそうです…！笑 嬉しいお言葉ばかり、本当にありがとうございます…！こちらこそありがとうございました！ (2020年6月7日 12時) (
レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
via - 私の友達がアイナナ大好きなんですよ！しかも、推しが同じだったはず…言葉での表現の仕方が凄く上手くて、簡単に小説の光景が思い浮かびました。凄く面白かったので友達にもオススメしてみようと思います！イベントに参加して頂きありがとうございました！ (2020年6月7日 9時) (レス) id: 124b642d9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ドーナツ | 作成日時：2020年4月1日 0時
