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「・・・水上さん・・・なんのドッキリですか?・・・それとも僕のこといじってます?水上さん、わざとその言葉を言ってますよね?」
疑うような目で私を見て、少し怒ったように言う真冬。
何でバレたのか分からなくて、ぐるぐると考えながら動揺をしてしまう。
「僕が知っている水上さんは、たまに毒舌ですけど、優しい人です。ですから、そんなことは言わないはずです」
そう言われれば、あんまり口悪く言った記憶がなく、過去の自分を恨めしく思う。
堂々と思っていることを言ってのけてしまう真冬の性格のせいで私は混乱する。
「それに、水上さんさっきからずっと思い詰めたような、辛そうな表情してます。今にも泣きそうな表情で言われても、説得力がないというかなんというか・・・」
真冬の言葉で、蓋をしようと決めていた感情が溢れ出てくる。
今からでも遅くないから、自分の気持ちを言えと言っているかのように。
泣くのを我慢していたのに、つーっと涙が頬を伝い流れてきてしまった。
「水上さ・・・」
『・・・私だって・・・忘れられたいわけじゃなかったよ・・・でも・・・お前は・・・真冬は・・・忘れた・・・私のことも・・・思い出も・・・何もかも・・・だから・・・嫌いなの・・・嫌なの・・・だって・・・辛いから・・・思い出がないってことをずっと実感させられるから・・・教えろ?思い出させて?そんなの・・・』
【A!】
『辛すぎて・・・出来るわけない・・・』
真冬は私の本音を知ると、悲しそうな表情をして私のことを見つめる。
忘れたのが事実だからなのか、悲しそうな表情の中には、申し訳ないという思いもうかがえるような気がした。
「・・・・・・思い出すまでは・・・・・・水上さんに関わらない方がいいですよね・・・忘れてしまって・・・ごめんなさい・・・」
真冬は私の家を出て行った。
本当に嫌われたかったのか、真冬に関わらないで欲しかったのかと聞かれれば、ノーと即答える。
好きな人に、嫌われたい人も、関わりたくない人もいるはずがない。
私はポケットに入っていた栞を出した。
もう嫌だ、と自暴自棄になりながら。
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あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - 桜鈴(みすず)さん» ありがとうございます。私は東京なのでいつ感染するのかとビクビクしていましたが、桜鈴さんのコメントを見て頑張ろうと思いました。桜鈴さんもコロナに負けずに頑張りましょう。 (2020年4月13日 11時) (レス) id: 519239ae11 (このIDを非表示/違反報告)
桜鈴(みすず) - これからも頑張って下さい。コロナウィルスに負けないよう、群馬から応援し続けていますね。 (2020年4月13日 7時) (レス) id: 3e552d64a0 (このIDを非表示/違反報告)
あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - 桜鈴(みすず)さん» コメントありがとうござます。私もこんな物語があったらと思って書いていることが多いので、同じ気持ちの方がいてくれて嬉しいです。私の作品を見て泣いてくれてありがとうございます。 (2020年4月12日 11時) (レス) id: 519239ae11 (このIDを非表示/違反報告)
桜鈴(みすず) - 何度か、泣いてしまいました。こんな物語があったらよかったのに。 (2020年4月11日 23時) (レス) id: 3e552d64a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あづの ひみ(元朝日菜薔薇) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/AdAsnhmp/
作成日時:2020年1月18日 15時