■30. ページ31
「Aさんは、…治崎に救けられたって」
そう話を切り出すと、分かりやすくAさんは動きを止めた。
おずおずと「ごめんね、相澤先生から聞いたんだ」と言えば、彼女は髪の毛を耳にかけながら何かを恐れるようにゆっくりと口を開いた。
『あの、どこまで聞いたの…？』
「どこまで、って…」
『…家族のこととか、友達のこととか、…個性、のこととか』
言葉の最後の部分が少し震えたのが伝わった。
そういえば個性の話は聞いてなかったな、なんて思いながらも最初の2つの話は聞いたと伝える。
『…そうだよ、治崎さんに救けられた。みんなに拒まれてた私に手を差し伸べてくれたのは治崎さんだけだった』
強い口調とは裏腹に、彼女はいつも通りの誤魔化すような笑みを浮かべていた。
『だから私は治崎さんの言うことならなんでもした。血だらけになった廊下の壁を掃除することだって、寝ないで実験のデータをまとめることだって、何も苦じゃなかったから』
「…でも君は」
『だから、…壊理のことだって、救けてあげようとしなかった』
そう言って目を伏せると、悔しそうにぐっと拳を握るAさん。
『…知ってるよね、デクさんなら。壊理の傷だらけな身体のこと。痛くて、辛くて、泣いてる小さな女の子を救けようともしなかった私のことどう思う？』
「…それ、は」
『軽蔑するでしょ？』
廊下の壁に背をつけて、眉を下げて笑った彼女。
僕には、そんな彼女の姿が自分を許せない、許さないで、とでも言っているように見えて。なんだか切なさを覚える。
「でも、君は壊理ちゃんを救おうとしてた」
『…』
「あの時、初めてあった時。君は確かに壊理ちゃんを救けようと、自分から遠ざけようとしてたよね」
忘れられなかった、あの時の君の寂しげに笑った顔が。壊理ちゃんを救ってあげて、と僕らに訴えるような。
『…それは、』
一瞬、彼女の瞳が揺れた気がした。
何かを飲み込みかけたAさんは「私だって」と震えた声で呟くように零す。
『…私だって、あの子のヒーローになりたかったから』
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ゆきんこ - 治崎廻さんが私の一番好きなキャラクターなのですが、夢小説がなかなか無くて自給自足しなきゃなぁ、と思っていたところ、この作品に出会いました。この作品が大好きです！続きもすごく気になります。更新頑張ってください。応援しています！ (2020年9月22日 14時) (
レス) id: 622aa4e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
碧佳 - え、めっっっっっっっちゃ好きです!!!すんごい続き気になる〜！更新頑張ってください！ (2020年3月3日 12時) (レス) id: f33055e332 (このIDを非表示/違反報告)
pico(プロフ) - ありささん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しい限りです！ (2020年2月17日 0時) (レス) id: 9e63868de4 (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - めちゃくちゃ好きですこの作品！めっちゃうちの読みたかったドストライクです！更新ファイトです！ (2020年2月16日 22時) (レス) id: 2c7a607a36 (このIDを非表示/違反報告)
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