■29. ページ30
────……
「あの…ちょっと僕、追ってきます…」
「緑谷くん？」
通形先輩の言葉に、彼女の表情が曇った。
まるで…手を差し伸べる前向きな言葉が苦しいとでも言いたげに。
それは通形先輩自身もきっと気づいてると思うけれど、この場で彼女に深く詮索していい部分じゃない。
だから、通形先輩は僕らに背を向けたAさんを何も言わずにただ見ていた。
でも僕は、
「…放っとけない、」
病室を飛び出せば、ドアのところにいた相澤先生に肘を掴まれた。
「何する気だ」
「ちょっと、Aさんと2人で話したいことがあって、」
少しだけ怪訝そうに眉を顰めた相澤先生だったけれど、じっと僕の目を見つめたかと思えば手を離してくれる。
「…まだお前に言ってないことがひとつある」
「え…？」
「俺の口から詳しいことは話せないが、一つだけ覚えておけ。お前の、お前らの正義感と強さは彼女にとってナイフだ」
まだ、言ってないこと…？
彼女が治崎に拾われるまでの話は相澤先生からなんとなく聞いた。それ以上に壮絶な何かがあったとでも言うのか。
「…考えてたんです、どうしたらAさんを救えるのか」
「……」
「だから、その前にもっと彼女のことを知らなくちゃ」
彼女が進んだと思われる道を僕は追う。
誰かから聞くんじゃ意味が無い。無理やり聞き出すのも意味が無い。…ちゃんと彼女が話してくれるのを待つのがきっとベストだ。
「Aさん！」
色の無い瞳、悲しげな笑顔、
初めて会った時から変わらない彼女の表情が頭から離れてくれない。
「あの、話したいことが…」
『…！』
僕を見るなり見開かれた瞳。
「あ、待って…！」
ふらりと逃げようとする彼女を止めると、彼女はびくりと大きく肩を揺らした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 821人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ - 治崎廻さんが私の一番好きなキャラクターなのですが、夢小説がなかなか無くて自給自足しなきゃなぁ、と思っていたところ、この作品に出会いました。この作品が大好きです！続きもすごく気になります。更新頑張ってください。応援しています！ (2020年9月22日 14時) (
レス) id: 622aa4e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
碧佳 - え、めっっっっっっっちゃ好きです!!!すんごい続き気になる〜！更新頑張ってください！ (2020年3月3日 12時) (レス) id: f33055e332 (このIDを非表示/違反報告)
pico(プロフ) - ありささん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しい限りです！ (2020年2月17日 0時) (レス) id: 9e63868de4 (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - めちゃくちゃ好きですこの作品！めっちゃうちの読みたかったドストライクです！更新ファイトです！ (2020年2月16日 22時) (レス) id: 2c7a607a36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
