嘴平伊之助さん 壱 ページ18
「Aさん、少しいいですか?」
もぐもぐとお八つの大福を食べている時に、炭治郎くんからそう持ちかけられた。
両の眉を下げ、心配そうな顔をする彼を放っておけなくて、私はごくんと大福を飲み込んだ。
「伊之助〜。何処に行ってしまったの?」
同じ柱であるしのぶちゃんのお屋敷にお邪魔している可愛い後輩たち。
そのうちの一人である嘴平伊之助を探し回ってかれこれ四半刻は経っていた。
炭治郎くんからの相談はこうだった。
「……伊之助、最近よく眠れていないみたいなんです。
気付くと、苦しそうな、悲しいような……そんな匂いがして」
「Aさんなら伊之助も好いているようだし、何とか出来るかもと思ったんですが…お願い出来ますか?」
可愛い後輩の頼みは断れないよね。
それに伊之助が心配だ。
確かに思い返してみると、最近は大人しかった気がする。
むむ、と唸りながら歩いていると、木の影に寂しげな色に染まった花びらが見えた。
これは私の特殊なもので、人の感情や善悪が花びらとなって見える。
感情によって色が変わるのは勿論、花びらの数も、形も違うのだ。
見ていてとても楽しいな、なんて思ってしまう時もある。
今、木の影にいるのは十中八九伊之助だろう。
そしてひらひらと落ちていく花びらは少なく、小さくて
そして物悲しい。
私はツキンと痛んだ胸を押さえて、屋敷の中から声をかけた。
「伊之助。そこにいるのはわかってるよ、大丈夫。」
するとガサリ、と音がして猪頭が木の影からちんまりと顔を覗かせた。
それはどこか、悪戯をして母親に叱られたような。
自分はひとりぽっちであると感じてしまったような。
ふわふわと、不安定な気持ちで溢れていた。
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三色 ─みしき─(プロフ) - 煉獄推しさん» 申し訳ありません。只今リクエストは受け付けていません。 作品を読んでくださりありがとうございます (2021年7月4日 10時) (レス) id: d6f8835509 (このIDを非表示/違反報告)
煉獄推し - リクエストオッケーですか?オッケーなら、返信が来たときに送りたいのですが… (2021年7月2日 18時) (レス) id: c685ed7b70 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» いえいえ、拙いだなんてそんな!みしろさんの作品大好きです!いやいや、私こそ様なんて付けなくていいのですよ…!あわわ、ありがとうございます…!変則的なので不安ですがもそもそ活動していきます…! (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)
みしろ(プロフ) - すいさん» なんと……!!私の拙い文章を読んで下さっていたとは!!有り難き幸せ!!様なんて付けないでください!!むしろ此方が様を付けなければいけないような……(?)すい様のペースで良いのですよ…… (2019年7月4日 2時) (レス) id: 509e58e731 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» みしろ様 ひょえ〜ッッ!ありがとうございます…!実はこっそりみしろ様の作品を見てましてひっくり返りそうになりました…。ありがとうございます、まったりと更新していきますね(´▽`) (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三色 | 作成日時:2019年6月17日 3時