嘴平伊之助さん 伍 ページ16
Aはふにゃりとした笑みを浮かべて伊之助を数秒眺めてから前を向き、伊之助に預けた体をゆらゆらと揺らした。
黙り込んでしまった伊之助を追及するわけでもなく、ただそのまま一緒にいた。
「……A」
「ん?」
名前を呼ばれたかと思えば、顎に回された伊之助の手。
その手はごつごつしていて、やっぱり男の子なんだなあとAは改めて感じていた。
そのままくいっ、と顎が持ち上げられ、上から伊之助の口付けが降り注いでくる。
額、瞼、鼻、頬、そして唇に。
ちゅ、ちゅ、と優しく落とされるそれはとても心地が良く安心した。
そう。普段の言動からわかると思うが、伊之助は基本荒々しい。
でも、Aに触れる時だけはどんなことでも優しい手つきや触れ方であった。
自分にとって大切なものを壊さないように。
ずっとずっと自分と一緒にいられるように。
壊してはいけない。
そう考えると、Aに触れる手は自然と柔らかいものになっていた。
「ん、伊之助。くすぐったい」
「……嫌なのか」
「ううん。ちっとも。」
ちゅう、と唇を当てるだけの可愛い口付け。
触れる時は一瞬で、すぐに別の場所にまた落とされる。
「Aは、何もしなくてもいい」
「えっ、嫌だった?」
「ちげぇ!!だから、その……
ウガアァァ!!」
「なになに、あんまり大きな声出さないでよ
吃驚するから」
伊之助は、自分の言いたいことが上手く伝わらなかったことにに苛立ちヴーッと唸り始めた。
自分の頭の中で浮かんでいることを、自分の語彙力では言葉に出来ないもどかしさもあった。
だから行動した。
伊之助はそういう男であった。
Aの両頬をバチン!と両手で挟み込んで勢いよく上を向かせた。
驚いて見開かれたくりんとした瞳が伊之助を見つめる。
Aは(首痛い、ゴキッていわなかった?折れてないよね)と思いながらも口にはしなかった。
そのままむにっと唇を押し付けて、数秒経ってからぷはぁっと息を漏らしながら離す。
伊之助にしては珍しく長い口付けだった。
248人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
三色 ─みしき─(プロフ) - 煉獄推しさん» 申し訳ありません。只今リクエストは受け付けていません。 作品を読んでくださりありがとうございます (2021年7月4日 10時) (レス) id: d6f8835509 (このIDを非表示/違反報告)
煉獄推し - リクエストオッケーですか?オッケーなら、返信が来たときに送りたいのですが… (2021年7月2日 18時) (レス) id: c685ed7b70 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» いえいえ、拙いだなんてそんな!みしろさんの作品大好きです!いやいや、私こそ様なんて付けなくていいのですよ…!あわわ、ありがとうございます…!変則的なので不安ですがもそもそ活動していきます…! (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)
みしろ(プロフ) - すいさん» なんと……!!私の拙い文章を読んで下さっていたとは!!有り難き幸せ!!様なんて付けないでください!!むしろ此方が様を付けなければいけないような……(?)すい様のペースで良いのですよ…… (2019年7月4日 2時) (レス) id: 509e58e731 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» みしろ様 ひょえ〜ッッ!ありがとうございます…!実はこっそりみしろ様の作品を見てましてひっくり返りそうになりました…。ありがとうございます、まったりと更新していきますね(´▽`) (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:三色 | 作成日時:2019年6月17日 3時