嘴平伊之助さん 参 ページ14
はたまた自分から離れていくAを引き止めたかったのか。
伊之助がAと関わっている時は、いつも幼い子のようだった。
教師や友だちである炭治郎に怒られても「テメェには関係ねぇ!!」と怒るばかり。
だがAには違った。
怒られるとしゅん、と落ち込み、きちんと反省する。
まあ次の日にはいつも通り暴れ回るのだが。
伊之助はいつもAの隣にいた。
比喩ではなく本当に。
休み時間も、お弁当を食べる時も、Aが友だちと談笑している時も。
Aが教師に頼まれ事をして校内を歩く時も、登下校も一緒だった。
炭治郎や我妻以外の男子生徒が近づこうものなら、ギロリと睨んで牙を剥いた。
その様子は、番犬だの狂犬だのと呼ばれていた。
だがAはそんなこと微塵も思っていなかった。
確かにくっついてきすぎだとは思っていたが、まるでお気に入りのおもちゃを取られたくない子どものようだ、なんて思っていた。
伊之助の家庭事情は当初、幼いながらになんとなく察しがついていた。
だからこそそんな伊之助を見ると甘やかしてしまうし、胸が痛むのだった。
腕を強く引かれ、離れようとしていたのに逆にゼロ距離になった。
ぎゅう、と強く抱きしめられて肩に顔をうずめられる。
そのまますりすり、とすりついてくる伊之助の頭を優しく撫でた。
「そんなこと…言ってねぇ」
いつもと比べ物にならないくらい弱々しい声。
ぎゅっと腕に力が込められ、伊之助の温もりに包まれる。
「うん、そうだね。
ごめん。私が早とちりしちゃった」
赤子をあやすように、ゆったりと話す。
何度も頭を撫で、ポンポンと背中を叩いてやる。
すると伊之助はすくっと立ち上がり、私の後ろに回りそのまま抱えるように抱き込んだ。
「花、みてぇな匂いすんな」
「そう?それは自覚してなかったなぁ」
抱きついたまま、伊之助は私の髪をさらりと指に通して遊んでいた。
すぐ横にある整った顔にドキリと高鳴る胸。
大人しくなった伊之助の表情は笑顔でも不満そうな顔でもなく。
ただ、そこに「嘴平伊之助」という男が在るだけだった。
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三色 ─みしき─(プロフ) - 煉獄推しさん» 申し訳ありません。只今リクエストは受け付けていません。 作品を読んでくださりありがとうございます (2021年7月4日 10時) (レス) id: d6f8835509 (このIDを非表示/違反報告)
煉獄推し - リクエストオッケーですか?オッケーなら、返信が来たときに送りたいのですが… (2021年7月2日 18時) (レス) id: c685ed7b70 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» いえいえ、拙いだなんてそんな!みしろさんの作品大好きです!いやいや、私こそ様なんて付けなくていいのですよ…!あわわ、ありがとうございます…!変則的なので不安ですがもそもそ活動していきます…! (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)
みしろ(プロフ) - すいさん» なんと……!!私の拙い文章を読んで下さっていたとは!!有り難き幸せ!!様なんて付けないでください!!むしろ此方が様を付けなければいけないような……(?)すい様のペースで良いのですよ…… (2019年7月4日 2時) (レス) id: 509e58e731 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» みしろ様 ひょえ〜ッッ!ありがとうございます…!実はこっそりみしろ様の作品を見てましてひっくり返りそうになりました…。ありがとうございます、まったりと更新していきますね(´▽`) (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三色 | 作成日時:2019年6月17日 3時