嘴平伊之助さん 壱 ページ12
「グワハハハハ!!誰も俺を止められねぇぜ!」
「伊之助!もういい加減にしてよ!」
中高一貫、キメツ学園。
校舎では忙しなく走り回り、同級生であり幼馴染みでもあるAを困らせる伊之助。
事の発端は、今日も今日とて半袖のシャツで登校し、靴も履かない伊之助に注意する風紀委員の我妻善逸。
だが我妻の勇気も虚しく散り、腹を蹴られたのをAが見かねて声をかけた事だった。
「伊之助、暴力はやめようね。
せめてシャツのボタン留めよっか……」
怒るでもなく、Aは穏やかな口調でそう言った。
だが伊之助はそんなことはお構い無しに反発し、走り去って行った。
「これが駄目なら俺はシャツを脱ぐぜ!
こんなもん邪魔で仕方ねぇからなァ!!」
「……すみません、我妻先輩。あとできちんと言い聞かせておきますので…。」
「いや、いつものことだから…はは…。気にしないよ…」
何度も頭を下げるAを見て、我妻は(Aちゃんも大変だなぁ)なんて他人事のように思っていた。
そして時間は戻り、昼休み。
物凄いスピードでお弁当を食べ終わり、猪突猛進!と教室だけじゃ飽き足らず廊下に出て好き勝手に暴れ回る伊之助に声をかけたのだった。
「伊之助!止まって!」
「ワハハハハ!!いいねいいね、楽しいぜ!!」
「私はちっとも楽しくないよ!!」
はぁっ、と息を乱しながら小走りで追いかけるAと、朝飯前だ、とでも言うかのように涼しい顔をして走る伊之助。
しまいには窓から飛び出していってしまった。
「あっ!もう…。
また戻らなきゃ……。」
「玄関からかなり離れちゃったなあ。
間に合うかな、これ…」
そんな伊之助を見て、Aはそう呟いて逆方向へまた足を進めた。
伊之助がいつも向かう場所へ行くために。
さわさわ、と気持ちの良い風が吹き草木が揺れる。
花壇に咲いている色とりどりの花。
そのすぐ側に伊之助はいた。
中庭は、伊之助のお気に入りの場所のようだった。
木に登っては昼寝をし、芝生の上にごろんと寝転がって過ごすのが好きだった。
もちろんAは知っていた。
そりゃあ何度も追いかけ、行き着く先が必ず中庭ならすぐに察しはついていたが。
「……伊之助。」
「まだ追っかけてきてたのかよ。」
今日は花の目の前にいた。
風が吹くと揺れる花と一緒に揺れる伊之助の髪。
しん、とどこか遠くを見つめる伊之助の凛とした表情。
その光景はなんだか神秘的で、Aは見てはいけないものを見ている気分になった。
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三色 ─みしき─(プロフ) - 煉獄推しさん» 申し訳ありません。只今リクエストは受け付けていません。 作品を読んでくださりありがとうございます (2021年7月4日 10時) (レス) id: d6f8835509 (このIDを非表示/違反報告)
煉獄推し - リクエストオッケーですか?オッケーなら、返信が来たときに送りたいのですが… (2021年7月2日 18時) (レス) id: c685ed7b70 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» いえいえ、拙いだなんてそんな!みしろさんの作品大好きです!いやいや、私こそ様なんて付けなくていいのですよ…!あわわ、ありがとうございます…!変則的なので不安ですがもそもそ活動していきます…! (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)
みしろ(プロフ) - すいさん» なんと……!!私の拙い文章を読んで下さっていたとは!!有り難き幸せ!!様なんて付けないでください!!むしろ此方が様を付けなければいけないような……(?)すい様のペースで良いのですよ…… (2019年7月4日 2時) (レス) id: 509e58e731 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» みしろ様 ひょえ〜ッッ!ありがとうございます…!実はこっそりみしろ様の作品を見てましてひっくり返りそうになりました…。ありがとうございます、まったりと更新していきますね(´▽`) (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三色 | 作成日時:2019年6月17日 3時