〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ27)

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恋バナには縁がなかった私も、少しだけ気になる人ができた。
最近キッチンで新しく働き始めた同じ歳の料理人だ。

彼とは趣味や考え方など色々と共通点が多く、簡単に言えば馬があった。

彼と付き合ったら幸せなんだろうな、とそう思っていた。

「A、さん！この後少しお時間をいただけませんか！？資料室で待ってます！」

顔を赤くして私に話しかけてきた彼の姿を見て、私も自然と顔に熱が集まる。
もしかして、告白？
そんな期待をしながら呼び出された部屋に急ぐ。

『失礼します。＿＿＿さん？いますか？』

返事は無い。
資料室は奥にスペースが空いた場所があるからそこに居るのかな？

そう思いながら数歩歩いたその時
バタンと扉が閉まる音がした。その数秒後には鍵が回る音。

『あっ、ごめんなさい！早く着きすぎちゃ…て…』

振り向くと、そこに居たのは私が好きになった彼ではなかった。

『ルッチ、さん。す、すみません！資料室にご用事だったのですね。すぐに出て行きます』

お辞儀をする為に視線を下げる。
その視線の先＿＿＿ルッチさんの腕の先。
彼は何かを掴んでいた。

よく見るとそれは私をこの部屋に呼び出した彼だった。

『…えっ』

彼はぐったりとしていて意識が無いように見える。
状況が全然掴めない。

混乱する私にルッチさんが淡々と話しかけてきた。

「住む世界が違う、と。お前はそう言ったな」

『！！』

そう言われてやっと理解した。

彼はあの時の私達の会話を聞いていたのだ。

そして、そのことにすごく怒っている。

「俺を振ったのはそれが理由か」

『…っごめんなさい、でも！』

「くだらねぇ」

そう言うとルッチさんは右腕に掴んでいた片思いの彼を床に落とした。

思わず傍に駆け寄って大丈夫かと声をかける。
良かった。息はしてるみたい。

慌てていたから忘れていた。

彼の傍に寄るということは必然的に、ルッチさんの傍に寄るということに。

「そんなにその男がいいか」

『……っあ！？』

ガッと腕を引っ張られ、壁に押し付けられる。

目の前には無表情で私を見下ろすルッチさん。

「住む世界が違うという理由だけで俺が諦める男だとでも思ったか」

『……っ！』

そう言うと彼は何を考えたのか、私に包丁を握らせる。
そして私の背後に回ると包丁を持った私の手を、その大きい手で覆うように上から握った。

…え、何これ