〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ26)

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住む世界が違う【ルッチ】ページ26

「好きだ」

昼休みに「ちょっと良いか」と呼びかけられて行った先でまさか告白されるとは思わなかった。
だって相手は…。

目の前の相手をチラリと見る。

スラリとした長身に黒のスーツとシルクハットがよく似合うこの人。サイファーポールで知らない者はいない。
CP9所属の暗殺者ロブ＝ルッチだ。

何故、ただの給仕である私なんかに告白してきたのかが全く分からない。
そりゃ仕事でお茶を入れたり料理を出したりすることはあるけれど、それだけの関係だ。恋愛に発展する要素なんて全く無かったはず。

ルッチさんが嘘を言うとは考えにくいけれど…。でも、どちらにせよ私の答えは決まっている。

『気持ちは嬉しいです。ありがとうございます。…でも、ごめんなさい』

頭を下げてその場を後にする。

この告白が本気だろうが、からかいだろうが関係ない。彼と私では住む世界が違いすぎる。

私は自分の身の程を弁えている。彼は私なんかと付き合って良い人間じゃない。
そして私も、もっと平凡な人と平和な家庭を築きたいと思っている。

ルッチさんも私なんかに告白したのは一時の気の迷いだろう。そのうち何事もなかったかのように忘れるはず。

そうして3ヶ月ほど経った。
ルッチさんに告白されたのも夢だったのではないかと思うようになった頃、私はいつもの給仕仲間の女子達と一緒にお昼ご飯をとっていた。

「あー！今日もルッチさん格好良かった！彼と付き合えるなら死んでもいいー！」

「ギャサリンは本当にルッチさんのことが好きだね。まぁでも確かに格好良いよね」

ご飯の後のお昼休憩は、もっぱら恋バナをしていることが多い。まぁ、私はそこまで興味がないので聞き専になることが多いのだが。

「そういえばAって好きな人とかいないの？」
「あー！私も気になってた！Aって恋バナとか全然しないもんねー」

『えっ』

困ったな。恋バナとか苦手だからあんまりしないんだよな…。

「好きなタイプとかでもいいよ！ルッチさんとかはどう？格好良いじゃない」

あぁ、彼女達の興奮してる様子を見ると、何かしら答えないと終わらないな。

『ルッチさんは…確かに格好良いけれど、私とは住む世界が違うから。私はかっこよくなくても良いから、もっと普通の人が良いかな』

そう言うとギャサリンは「夢がないなー」と言って笑った。

私達は知らなかった。
この会話を静かに聞いている男がいたなんて。