〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ14)

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仮面の笑顔【キラー】ページ14

笑うことが嫌いだった。
自分が笑うと、他の誰かがそれを見て笑う。
笑い方がおかしい。そう言って笑う。
俺は人に笑われないために、笑うのをやめた。
仮面を被り、顔を隠した。
そしてそのうち、笑い方を忘れた。

笑顔なんて、生きる上で必要はない。
そう思っていた。

あの笑顔を見るまでは。

物資補給のために立ち寄った島で、彼女を見つけた。

友人だろうか。隣にいる人間と楽しそうに笑っている彼女の姿に心を奪われた。

あの笑顔が欲しい。
俺の隣で笑って欲しい。
俺の代わりに、俺の分まで笑って欲しい。

この女が欲しい。
欲しいならどうする？
奪え、連れ去れ。
俺ならできる。

彼女がどのように逃げようが
彼女の思考を読み取り、先回りできる頭脳がある。

多くの人間が彼女を助けようと手を差し伸ばしても
その全て救いの手を両断し、肉塊に変える力がある。

「ねぇ、A。あの青い画面をつけた金髪の男の人、ずっとAを見てない？」

『え？』

「…っ、なんか、ヤバい気がする！A！行こう！家に帰ろう！」

あぁ、余計なことを。
彼女から笑顔が消えてしまったじゃないか。

「A！走って！！」

「女、お前は用済みだ」

愛武器の刀が肉に食い込み、血飛沫が舞う。
隣にいた彼女にもその赤が降り注ぐ。

『……えっ』

Aと呼ばれた彼女は理解が追いついていないのか、地面に倒れた女の姿を呆然と見つめている。

「不運だな。お前は」

そう言うと、やっと彼女がこちらを向いた。
驚きと困惑と悲壮感が混じり合った、そんな表情。あぁ、そんな顔をさせたいわけじゃないのに。

「そう怯えなくていい。お前が隣にいて、俺の隣で笑っている限りはお前の周りの人間にも危害を加えることはないと約束しよう」

女は俺の予想以上に聡かった。

自分が逃げ出したりしなければ、丸く収まることを瞬時に理解したようだ。

それから、俺の隣には彼女がいる。

仲間達とも上手くやれているようだ。

あぁ、だけど

俺が欲しかった笑顔は本当にこの笑顔だったか？

“仮面の笑顔”

(仮面を被った男の隣には、仮面を貼り付けたような笑みを浮かべる女が立っていた)

(俺は何を間違えた？)

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

『貴方が私に仮面をかぶせたのよ』

私が心から笑える日は、きっと、貴方が死んだ時だけ。
貴方が死んだ時、最高の笑顔で天国に送ってあげるわ。殺戮武人さん