七人目の六年生の話参

その顔に ページ15

『久々知』



Aが久々知の肩を掴み目線が合わさる
驚きに満ちた顔で見つめる久々知にAは語りかけた


『いい久々知？お前にも、お前を大切に思い、隣にいてくれる仲間がいる。友がいる。何も心配する必要はない』

「…はい」


久々知はその容姿から過去にたくさんの苦労をここまで重ねてきている。

　Aもかつて久々知が上級生に襲われそうになっているのを助けた経験がある

生半可な安い励ましで救われるなんて思わない

過去を乗り越えるのは今じゃなくていい

だけど、せめて知っていて欲しかった

お前を大事にしてくれる存在を


(俺も、たくさん救われた)


自分ではない、存在に。


ふと、よぎったのは忍術学園で出会った人達

鷹尾秀一郎

ほたる

……そして、




“僕の兄弟になってくれないか？”



『…っ、』

「先輩？どうし、…！」

『……ごめん、久々知』

「え、」

『本当はもう少し話したい所だけど、もう…行かなきゃ
竹谷が起きたらよろしく伝えておいてくれ』


久々知の肩から手を離し歩き出すA
離れていく背中を見つめ久々知は固まる


…止めなくちゃ

…何故？

…わからない。でも、でもっあんな顔見てしまったら……



「先輩、」



ふと思い出すのは過去に竹谷が呟いてた一言


“たまに、本当にたまになんだけど…時々委員長がいつも見てる顔と全く違う顔に見える時がある

きっと、オレの気のせいなんだと思うけどな”




(あぁ、これの事だったんだね。八左ヱ門)




優しさが欠落した様な。

背筋が凍る様な

なんとも言い難い恐怖心を久々知は覚え始めていた



(気のせい。なんて、言えればいいのに)



姿が小さくなるAの背を追いかけ
手を伸ばした＿＿。


だけど、それを阻む様にして別の場所から手首を掴まれた




「！？…あなたは、」

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