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【紫耀】
「廉君に告白されたんだ。」
俯き加減で恥ずかしそうにそう話すAを前に、俺の心は巨大な竜巻でも通ったみたいに乱れに乱れまくっていた。
「でね、最近私も廉君のこと好きだって気付いたの。」
副作用どころじゃない。
どうやら彼奴は薬なんかじゃなく、俺の大切なたった一人の妹に、猛毒を仕込んでくれたみたいだ。
「んだよ…廉の奴、俺に何も言わないで…」
廉がAに告白してたなんて、寝耳に水だ。
そもそもAに特別な好意を抱いていたことすら初耳なわけで。
Aにいよいよ恋人という絶対に兄である俺が踏み込めない世界ができること、さらにそれが廉であること、
そして廉が俺に何も話してくれていなかったというショックのトリプルパンチ。
その破壊的な衝撃を受けヨロヨロになった俺は、後日俺が何も知らないと思っていつも通り接してくる廉に、なけなしの力を振り絞って何度もパンチを繰り出してやった。
「湿布貼りすぎ。」
「本当一年中日焼けしてるよな。」
「いい加減ヤギみたいな食べ方やめろよ。」
半分はこんな感じで掠りもしない見事な空振りだったけど、それでもなんとか攻めているつもりだった。
だけど廉から返された言葉は、何を取り繕うでもなく、真っ直ぐでシンプルなものばかりで、
悔しいくらいにスッと自然に俺の心に馴染んできたんだ。
まさにカウンターパンチ食らわされた気分。
別に廉がダメなわけじゃない。
廉の良さは十分過ぎるほど知ってるし、俺が思う通りの誠実な男だってこともわかってる。
それにきっと、
Aは廉といることで、俺といる時とはまた別の幸せや安心感を感じることができるだろうし、
家族が完全にばらばらになってしまったことへの喪失感だって、極力感じずに済むかもしれない。
そう、わかってる。
喜ぶべきことなんだってこと。
Aも廉も大切だから、
本当に本当に大切だから、
そんな二人が想い合っている今の現状は、喜ばしいことでしかないんだ…
だけど素直にAと廉のことを認める気恥ずかしさと、決して少なくはない嫉妬心が邪魔をして、
「マジかよ廉！」
「紫耀の妹見てみたい！」
盛り上がっている周りを他所に、
「門限は0時だからな。」
俺はそう言うだけで精一杯だった。
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作者名：P | 作成日時：2018年9月19日 22時
