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【紫耀】
今思えば、きっとその頃から、Aの欲しい物は"物"ではなくなっていたんだろう。
当たり前に注がれるはずの、親からの愛。
どんな時も自分を受け入れてくれる、温かい家庭。
Aが求めていたのは、そういうものだったのかもしれない。
そんなことなど知る由もなかった去年の俺は、どうしても何か形に残る物をプレゼントしたくて、腕時計をプレゼントしたんだ。
アクセサリーを付けないAに敢えて腕時計を選んだのは、俺とAは離れていても同じ時間を生きている、という意味を込めていたから。
今年は何にしよう？
またいつもと同じ答えが返ってきたって、俺は何か贈らなきゃ気が済まない。
だって、初めてだろ？
時差のない同じ場所で誕生日を迎えられるのは。
それに、
押し付けがましいかもしれないけど、
いろんなことを乗り越えて、俺と一緒にやっていくと決めてくれたAに、何かこれからの糧になるような物をプレゼントしたいんだ。
目を開けると、窓から見える煌びやかな夜の街。
俺は咄嗟に背もたれを起こして、何かプレゼントを見つけるのにいい店はないかと、流れる街並みを夢中で見ていた。
「あっ！」
そして目に入ったとあるお店に、思わず声を上げてしまう。
「ビックリした…どうかしました？」
バックミラー越しに俺を見て、そう訊いてくるマネージャーに、
「あ、いや、すみません…大丈夫です…」
慌てて何でもないことをアピールすると、これだというプレゼントを思いついたことに、俺は膝の上で小さくガッツポーズをして、一人喜びを噛み締めた。
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作者名：P | 作成日時：2018年9月19日 22時
