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そんな士気が高まる彼らを、Aと尊奈門は少し離れたところから未だに正座したまま見ていた。
「ねぇ尊奈門、今の山田先生の話ちゃんと聞いてた?」
「ちゃんと聞いていたが、それが何か?」
「『15人』だってよ」
「?それがどうした?」
「おや、算学は苦手なのか?」
「そんなわけあるか!!」
「えーじゃあここにいる人数数えてみなよ」
「……五年生5人、六年生6人、教師が2人、そして私と貴様。全部で15人だろ。何が間違っている」
「確かに算学はちゃんとできるみたいだ。でもその答えが間違っているのには気づかないかぁ」
「何?何処が違うと言うのだ!」
「尊奈門、我々がなんの目的でここにいるか知ってる?」
「は?伏木蔵くんを探しているんだろ?……あ」
「お!わかった感じ?」
「伏木蔵くんを合わせたら16人だな……」
「だけど山田先生は15人と言った。さて、それは何故?」
「……学園の関係者じゃない私は含まれていないと言うことか」
「大正解!!仲間はずれだね!」
「ちっ……!!貴様、態々そんな事を遠回しに教えるとは性格悪いな!!」
「お褒めいただき光栄です〜」
「誰も褒めていないだろうが!!」
「あはは!すまんすまん!尊奈門の反応が面白いからつい揶揄いたくなるのだ!」
許せと言いつつ笑いっぱなしのA。その顔は実に良い笑顔だった。
尊奈門はその笑顔を見て口当ての奥で口角を上げた。
彼が初めて見たAの笑顔は、先程土井と仮説について話した最後に見せたものだった。A自身はにこりと笑ったつもりだったその笑顔は酷く歪んでおり、今にも泣き出しそうな顔だった。
それを見た誰もがどう声を掛ければ良いのかわからなくなり、周囲は沈黙に包まれたのだった。
尊奈門もその歪んだ笑顔に胸が痛んだ。
Aとは初対面だが事前に闇夜の丹頂だと聞いていた。闇夜の丹頂は忍者の中の忍者だと忍軍の誰かが言っていたので、さぞ冷酷で残虐な者だと勝手に思っていた。
だがそれは間違いだった。
だってそんな人物が弟思ってあんな悲痛な表情をするだろうか。否しない。
だから尊奈門はどうにかしてAを救ってやりたくなった。
初っ端の印象はあまりよろしくないし、年下なのに生意気だが、それでも歪んだ笑顔ではなく心から笑ってほしいと思った。
(よかった、ちゃんと笑えているな)
だから今、過程がどうであれAを笑顔にすることができて嬉しかった。
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レオン(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます。続きを更新しました!続編にてご覧ください。 (2022年8月3日 15時) (レス) id: bc25bf8dca (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - 続きが速く見たいです (2022年7月30日 14時) (レス) @page47 id: 730adcd2c0 (このIDを非表示/違反報告)
レオン(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます!更新を喜んでいただけて嬉しいです!これからも頑張ります!!またご指摘もありがとうございます。訂正いたしました! (2022年7月5日 21時) (レス) id: fc3a292471 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 更新嬉しいですー! 29-6の夢主さんの説明のところ「高いく」は「高く」ではないでしょうか? 一応お伝えしときます。これからも無理のない範囲で頑張って下さい! (2022年7月5日 16時) (レス) @page34 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
レオン(プロフ) - マイさん» コメント、そして応援ありがとうございます!面白い、好みと言っていただけてとても嬉しいです!!これからも頑張りますのでお楽しみいただければ幸いです! (2022年7月3日 10時) (レス) id: fc3a292471 (このIDを非表示/違反報告)
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