忘却 ページ13
ふと目が覚めると
隣にAがいて。
スヤスヤと寝息をたてる。
付き合いたての頃
俺の隣は緊張すると
なかなか寝付けなかったAの
照れた顔を思い出した。
「俺ね、多分ずっとAが好きだよ」
彼女は確かにいる。
俺へと好意を向けてくれたから。
ハッキリ言って心の隙間を埋めてくれるには
【丁度いい】存在だった。
「、、、忘れられないんだ。」
Aの優しい顔も
美味しい料理も
少しドジなとこも
意外と強がりなとこも。
そっと頭を撫でると
Aはくすぐったそうに
身を捩る。
「、、、目黒のとこ、行くなよ」
お酒に酔ったAに
目黒との関係は聞き出せなかった。
でも、俺の不安は日に日に大きくなっていて。
あ〜俺はまだAのことが好きなんだ。
そう理解するのに時間はいらなかった。
「ん〜、、、」
朝日の光が眩しくて
薄ら目を開ける。
そこは見慣れた景色ではなくて。
自分の家ではない、と脳が判断する。
「えっ、、」
自分の腰に回った白くて細い腕。
顔を見れば辰哉は気持ちよさそうに
眠っていて。
咄嗟にやってしまった、、と頭を抱える。
「待って、、、
なんで、お酒飲んで、、え？」
寝起きで回りきらない頭を必死に
動かすけれど、昨日の記憶は一切ない。
「、、、服は着てる」
過ちは犯してないようだと
そこは少し安心する。
「帰らなきゃ、、、」
携帯を見れば蓮からの着信の嵐で。
その着信履歴は深夜12時を最後に
ピタッとなくなっていた。
目黒蓮どこにいるの?
目黒蓮迎えに行く?
目黒蓮心配だよ。
目黒蓮会いたいよ。
LINEも蓮からの通知で埋まっていて
やってしまったと頭を抱える。
早く帰らなきゃ、
と辰哉の腕をぬけて
身支度をする。
さすがにこの年で崩れたメイクで
外には出たくない。
「あれ、A起きたの？」
後ろからそう声が聞こえて
びくっと身体が反応する。
「なんか朝ごはん食べる？」
そう言って寝起きの辰哉は
ふにゃっと笑った。
「ううん、、食べない。
私、早く帰らなきゃ。」
そう言うとさっきまで笑ってた
辰哉は途端に真顔になって
私の目の前までやってくる。
「俺、昨日言ったこと本気だよ？」
「、、え？」
「やっぱ覚えてないよね。
A、酒にのまれるタイプだもんね」
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作者名：あやぴ
| 作成日時：2021年9月7日 3時
