8話 ページ9
どうしよう何を言っても聞いてもらえないし、かといって大勢の男性に女子高生1人が抵抗できるはずもない。
私は冤罪をふっかけられて警察に連れていかれるのか…!?
キッド一生恨んでやる!!と思ったその時、背後から「中森警部はどうやら勘違いをしていらっしゃるようですね」と声が聞こえてきた。
後ろを向くと、声の主はバサッと音を立てて白いマントで自分の身を隠した。
次の刹那、その場に現れたのは真っ白な衣装に身を包んだ男性の姿だった。
警部は「か、怪盗キッド…!!」と驚いた表情で白い衣装の彼を指さした。
彼が今、世間を騒がしていると有名な怪盗キッド………!?
深く被ったシルクハットとモノクル、おまけに逆光のせいもあってどんな顔をしているのか確認できない。
夜風にマントをはためかせながら怪盗キッドは「私が本物の怪盗キッドですよ、中森警部?」と煽り、口元に弧を描いた。
「じゃ、じゃあ、この女の子は一体…?」と警部が私を見た。
「彼女は閉店間際にデパートに駆け込んだお転婆な一般客に過ぎませんよ」と話しながらキッドはコツコツと足音を鳴らし、私たちの方に近づいてくる。
警部や警官が「そうなのか?」という目で見てきたので私は『そうです!!一般客です!普通の女子高生です!』と首を縦に振った。
キッドは「そろそろお別れの時間のようです…」と言ってマントを翻した。
どうやら彼はこの隙に退散しようとしているらしい。
ボンッと爆発音がしたかと思うと、視界が一気に煙に覆われた。
周りが見えずその場に立ち尽くしていると、突然誰かの手が腰に回ってきて驚きで心臓が飛び跳ねた。
悲鳴をあげようとすると口元に人差し指を当てられ、阻止される。
「そうそう、今回の宝石は目当てのものではなかったのでお返しさていただきます。代わりにこちらのお嬢さんを…」と言うキッドの声がすぐ近くで聞こえた。
腰に手を回してきたのは怪盗キッドだということがこの時点で分かった。
キッドに「しっかり掴まっていて下さいね?」と声をかけられると同時に、自分の体が宙に浮かぶ感覚を味わった。
煙幕でまだ視界が良好ではないため、どういった状況か理解できない。
急にビュンッと言う風を切る音がして恐怖で目をギュッと瞑った。

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作者名:きょん | 作成日時:2024年5月31日 2時