36話 ページ37
キッドコールが盛り上がってきた頃、夜空に白い飛行物体が出現した。
怪盗さんのお出ましに黄色い歓声が上がる。
上を見上げていると、突如として白い煙が立ちこみ群衆を包み込んだ。
キッドは一体どこに…!?
視界が晴れた頃、展示ケースの方を見ると…
そこには、月下の奇術師、怪盗キッドが白いマントをはためかせ姿を現していた。
「すご〜い!あんなところから飛び降りるなんて…!」
『さすがキッド様…!』
「まるでスーパーマン!」
キッドを応援する声がさらに増え、報道陣も一斉に集まってきた。
そして、報道陣は彼に「何か一言!」とお願いしているようだ。
「あぁ、では…鈴木次郎吉相談役に伝えてください。今回は寝耳に水な話。十分な時間が取れずいつもの予告状を出せなかった無礼をお許しいただきたい…とね?」
キッドがセリフを言い終わったと同時にどこからかガシャンと鈍い音が響き渡る。
なんと、網でできた大きな柵が錦座の交差点を囲み込んだのだ。
『あ、網…?!』と驚嘆してしまった。
「次郎吉おじさま、やることが派手ね〜」と園子は落ち着いている様子だった。
これがお金持ちの考えることか…とため息が出そうになる。
網の高さはデパートと同じくらい。
キッドはどうやってここから抜け出すの…?と不安に思って彼の様子を見ていると、不意にバチりと目が合った。
突然のことにドキリと心臓が鳴った。
青く澄んだ瞳に目を奪われる。
彼はふわりと微笑みを浮かべた。
か、かっこよすぎるよ…余裕の笑み!と見惚れていたが、見物客たちの心配の声でハッと我に帰った。
「キッド様ー!私に化けて逃げて!」
「お、俺でもいいぞ!キッド!!」
「心配には及びませんよ。こうなることは想定済み」と彼は余裕の表情。
さすがキッド様!!と園子のように心の中で叫んだ。
一人のアナウンサーは「じゃあ、この後はどうするおつもりで…?」とマイクを彼に向けた。
「そりゃあ、まぁ、仕事も済んだし帰ろうかと…」
「で、ですからどうやって…?」
「テレポーテーションで…」
キッドはそう言うと不適な笑みをもらしたのだった。

285人がお気に入り

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょん | 作成日時:2024年5月31日 2時