おもちゃ箱【×ym】 (ページ29)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:52,868 hit

トキメキ（arym）ページ29

カタオモイのarym

･

「こことかどう？」

「このホテルもよくない？」

どっかの海のパンフレットを覗き込んで、あーだこーだ言ってるバカップル。

「慧、この旅館は？慧の言ってた露天風呂も付いてるよ」

「わあ、ほんとだ！ここもいいね～！」

2人のときにしてくれよ……。

よりによって2人がイチャついてる場所は我が家のリビング。

自分の部屋にあがればいいことなんだけど、なぜか着いてきちゃっただいちゃんを1人残して部屋には行けないし。

かといって、だいちゃんと部屋で2人きり、というのも…。

そんなわけで、ソファの隅に縮こまってだいちゃんと2人、暑苦しいカップルを眺めていた。

「っていうかさぁ、2人ともなんの話してんの？」

「今度行く海の話だよ～」

にやけ顔が隠せてないぞ、慧兄ちゃん。

「へえ！ね、俺も海行きたい！！」

……！！

ピシッと空気が固まった音がした。

だがそんな凍ったような空気に5歳児の男は気づくはずもなく。

「ん？どしたの皆」

目を丸くさせて俺らを見回す。

「…だいちゃん、分かれよ…」

「え、なんでそんな冷めた目で見てくんの？！」

慧兄ちゃんと雄也は軽く目配せしあって、

「だいちゃんも行きたいの？」

「じゃあ4人で行こうか！」

爽やかに笑った。

「うおお！やった、ありがとう！！」

「俺もいいの？」

驚いて2人を見上げると、

「うん。昔に戻ったみたいに遊ぶのもいいでしょ？」

慧兄ちゃんが小首を傾げる。

……う、可愛い。

きゅん、と実の兄によって締め付けられた胸。

ふと周りを見ると。

………。

おい、雄也、海が似合うイケメンの面影ゼロだからな、今。

そして5歳児、さっきまであんなに子供みたく騒いでたのに急に黙ってんじゃねえよ。

……どいつもこいつも色ボケしやがって…！！！

当の本人はなんにも分かっておらずポヤポヤしてて。

……絶対なにがあっても慧兄ちゃんを守んなきゃな。

周りの獣たちを軽く睨んだ。