おもちゃ箱【×ym】 (ページ27)

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「うぇ～い、もぉ、のめなぁーい！」

…なんだ、これ。

家に帰るとリビングには、ビールの缶が散らばっていた。

「なにやってんの…。」

はぁ、と軽く溜息をついて片付けを始めると、

「もぉ、そんなかたづけはぁ、あとでいいでしょぉ？」

んふふ、と酒臭い山田が俺の首に腕を巻き付ける。

酒の匂いに混じって山田の甘い香水の匂い。

こんなに近くで山田を感じられるのは恋人、というカタチになってからは初めてで。

「ねぇ、おれのこと、だきたくなぁい？」

「…やまだ…。」

唇を尖らせて、顔を近づけてくる山田が可愛くて、そっと頬に手を添える。

静かな部屋に、小さくリップ音が響いた。

「はやく…べっどにつれてってぇ？

_______________……ゆーと」

思考が停止した。

目の前の世界が色を失っていく。

山田の声だけがクリアに聞こえて、

1番聞きたくない言葉だけが俺の耳に届いてしまう。

「ゆーと…はやく…」

俺に腕を伸ばしてくる山田が可愛くて。

だけど、

その熱っぽい視線も

伸ばされた腕も

甘ったるい声も

全部全部、俺に向けられたものじゃない。

心がどす黒く染まっていくのと同時に、胸が苦しくなって泣きたくなる。

俺じゃやっぱりだめだったんだな…。

結局、おまえの心の中には今も昔もあいつしかいない。

じゃあ、俺はどうすればいい？

俺の存在価値ってなに？

山田にとって俺はなに？

自分から望んだことだけど、もう心は悲鳴をあげていた。