しんじつ ページ17
緑谷「…さあ、吐いてもらうよ」
下を向いたまま一向にこちらを振り向かない彼に声をかける
カタン、と正面の椅子を引けば彼はわざとらしく肩を跳ねさせた
緑谷「レストロ、なんでAちゃんを攫ったの？」
レス「…」
緑谷「黙ってばっかじゃ分からないよ、話すまで今日は帰らないからね！」
真っ直ぐ目を見つめれば、彼は怯えたように目を逸らす
レス「…戸籍表に、僕達のデータは載ってましたか」
緑谷「え、……いや、どうしても見つけられなかったよ」
レス「そうですよね。
僕達は凶悪敵の元に産まれたんです。
敵故に、表を歩けませんでした」
ポツリ、ポツリと言葉を告げる
レス「そんな時に、大好きだった母がヒーローに捕まりました
僕達はヒーローを恨んで、ある作戦を思いついたんです」
緑谷「作戦？」
レス「不老不死の、薬を作るんです」
緑谷「…それは、どうやって作るの？」
レス「治癒個性の血と涙を使うんです。
だけど治癒個性は厄介で、持ち主が望まないとその個性は発揮されない。
だからエレイズが記憶を消して、洗脳して、順調に進めました」
緑谷「、そんな…」
そんなことが行われていたなんて
レス「…何年も前の、癒河一家心中事件を知っておられますか」
緑谷「ああ、Aちゃんの…」
レス「その家に乗り込んだの、僕とエレイズなんです」
緑谷「…は？」
レス「最初は僕も乗り気でした、だけど、だんだん狂い始めるエレイズを見て怖くなった
隙を見て、Aを逃がしたんです。
記憶を戻すことは出来ないから、せめてもの罪滅ぼしのつもりで…」
緑谷「そうか、話してくれてありがとう」
レス「はやく、はやくエレイズを止めてください。
また記憶を消されてしまう」
ボロボロと涙を流すレストロ
優しい心を持った敵を久々に見たな
緑谷「うん、安心して
もう向かってるから」
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作者名：イオリ | 作成日時：2020年6月7日 0時
