義理の息子はそらるさん

24 此方と彼方 ページ25

そらるside



丁度親父が帰ってきたのは、Aさんが仕事で家を出ていった後だった



此「あら、彼方だけか」



明らかにしょんぼりする親父



だよな、うん



だって、愛し合っている人だもんな



会いたい、よな



俺は親父が座る目の前の机にお茶を出した



そして正面に座る



此「なぁ、彼方」



そ「...ん」



此「俺はお前が生まれてきた時本当に嬉しかったん

だぞ。小さい頃は今よりずっと笑う子供だった」



そ「...今は笑わないみたいじゃんか」



いや、まあ実際そうだけどさ



此「...彼方を見ると美咲を思い出すよ。笑った顔が

よく似てたんだ」



ああ、そうだった



俺は母さん似だ



白い肌だとか、顔とかよく似ている



親父にはどこが似たんだろうか



...少し癖がついた髪かな



此「俺は...できるなら、最後まで美咲のそばにいた

かったんだよ」



そ「...でも1回も見舞いにすら来なかったよな」



此「あのな、彼方」



親父のこんな苦しそうな顔を見たことがあっただろうか



久しぶりにちゃんと見た親父の顔は昔より頬がこけていて、それでも昔みたいに



かっこいいのはなんでだろう



此「美咲はな、手術をすれば治る病気だったんだ」



そ「それって...どういう事」



此「でも、手術には膨大なお金がかる。その為に俺

は必死で働いて稼いでいたんだよ」



そ「そのお金で、手術出来たじゃないか！！！」



此「...そうだな、そうかもしれないし、そうじゃな

いかもしれない。まだまだ稼がなきゃいけなかった

かもしれない」



そ「ねぇ、そのお金はどうなった訳」



苛立ちを隠せない俺を親父は見つめてきた



そう、いつだって母さんは親父の事を考えていた



そ「...母さんは...親父をずっと待ってたんだよ

っ、最後の最後まで、ずっとだ...」









美咲『...か、なた』



そ『母さん...！』



美咲『...此方さんは、こんな日でも来ないのね』



母さんが危篤だと言う連絡を入れたはずなのに、親父は来る素振りすらない



俺はそれでも笑っている母さんに涙が止まらなかった



美咲『彼方、お願いがあるの...』



そ『な、なに...？』



美咲『...此方さんが、他の人と幸せになろうとする

時、彼方が許してあげてね...？』



そ『...』







本当に、本当にずっと...



此「美咲がそんな事を...」



そ「...」



此「お金はな、無くなってしまったんだよ...使わ

れてしまってね、」



そ「...は？」

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