ヒーローがログインしました！season3【歌い手】

ヒロイン！１３７ 坂田side ページ47

まふに言われるがまま頭の中の辛い記憶を探すけど、そこだけ漂白されたように真っ白だった。

辛いって、どんな感情なんだろう。

わからない。わからないや。

記憶を見られて嫌とか、そんな気持ちは案外湧かなかった。

ただごめんね、それだけしか思わなかった。

まふくんの次くらいには、一緒にいる時間長かったと思ってるんだけど。

ヴァンプが僕の記憶を知ってるなんて、全く気がつかなかった。

時々、ぽつりと僕が欲しがっている言葉をくれることはあったけど。言い方がさりげなかったから、たまたまだと思ってたし。

僕の分まで背負って、気がつかないくらいの優しさをずっとくれてたんだな。

正直、記憶がないことに気がついたときはすごくぞっとした。

けど正直、心のどこかで良かったと思った。

辛い記憶から解放されたとか、そうゆうことじゃなくて。

ヴァンプに知ってもらえたから、気が楽になったっていうか…。

よくわからない感情だけど。

それに、気づいたんだよ。さっきどこかで僕のことを呼ぶ声がしたのは、ヴァンプが無意識下で僕のことを呼んでたんじゃないかって。

まふくんはそんなこと言ってなかったし確証なんかないけど、僕の首についたコウモリはヴァンプに繋がってるから。ありえない話やないと思う。

坂「起きて、ヴァンプ。僕、弱いけど自分の記憶くらい自分で背負うから。ヴァンプに丸投げなんてしないから。」

まふくんの隣にしゃがみ込んでヴァンプの髪にそっと触れる。

せっかく綺麗な髪なのに、血がついて固まってしまっている。

髪の毛からは血液独特の甘ったるいような鉄の匂いと、ヴァンプのふわりと包み込まれるような花の香りがした。

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