ヒーローがログインしました！season3【歌い手】

ヒロイン！１３５ そらるside ページ45

ま「これはまだよくわかってないメカニズムなんだけどね。ヴァンプが血を吸うと、相手によっては別のものまで吸い取っちゃう。」

まふまふはそっと自分の胸に手を当てた。

ま「相手の辛い記憶。記憶はヴァンプの中に入るとひとつの人格のようになる。」

血を吸われたことのある坂田とるすがぎくっと肩を震わせた。

ま「だから坂田、今坂田には『辛かった頃の記憶』ないでしょ？」

坂田の辛かった頃の話は聞いたことがあった。

親にネグレクトをされ、必死に親に呼びかけても返事すらしてもらえなかった幼少期の話。

坂田はその頃の経験から、人の視線というものをずっと気にして、嫌われないように振舞ってきた。

ま「ヴァンプだって誰の記憶を吸おうとか、吸わないとか、コントロールできない。でも、記憶を吸ってしまったら…さっきみたいにいろんな人格や記憶が頭の中をぐちゃぐちゃにしてしまう。」

さっきのヴァンプは、明らかに変だったもんな。

まさにぐちゃぐちゃに全部入れ替わってる感じだった。

ま「るすくんとか、坂田とかが嫌な思いしないように黙ってたんだよ。耐えてた。だから、もし不快に思ったならこの話は忘れて欲しい。」

るすも坂田も黙っていた。

うらたくんも、Eveも、下を向いていた。

俺も、何も言えなかった。

ま「ヴァンプが自分から坂田に触れて力を解除しないと、坂田に記憶は戻らない。ずっと苦しみ続ける。坂田の首についてるコウモリが、ヴァンプに戻るまでずっと。」

…光るコウモリがヴァンプに吸い込まれるところを見た事がある。

あれは、そうゆう意味だったのか。

ま「次ヴァンプが起きたら、坂田は出来る限り近づいて。多分、僕らに危害を加えることはないから。」

これだけ隙があったのに逃げずに放心している姫を見る。

ヴァンプが暴れたような形跡が床や壁には残っていたけど、姫はかすり傷一つなかった。

きっと姫についてる血は、ヴァンプの腕から流れていたやつだろう。

…そもそも、ヴァンプのあの腕の傷はなんなんだろう。

ヴァンプが少し身じろぎをした。

目は覚めていないようだけど、皆が少しビクつく。

まふまふはそんな俺らを見ると悲しむような目線をよこし、そっとヴァンプを抱きしめた。

ま「…ごめんね、ごめんねヴァンプ。僕がちゃんと見てなかったから傷つけちゃったね。」

『守るって、言ったのにね』

まふまふのその言葉がやけに寂しく聞こえた。

ヒロイン！１３６ うらたside→←ヒロイン！１３４ るすside

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す