ヒロイン!131 ページ41
まっか。
視界が、赤い。
何が起こってるのかわからなかった。
自分の思考さえまともに保てない私には、今自分が何をしていて、周りがどんな状況なのかを判断することはできない。
ただ、赤信号を見た時みたいに、『赤だ』って思った。
あぁ、姫さんが泣いてる、多分。
その声が聞こえてる気がする。
「おぇ…ぐぉ゛え゛、」
突然口の中に酸っぱいような味が広がり、べちゃべちゃと胃液がこぼれ落ちた。
体は燃えるように熱いのに、なぜか寒い。
それにしても喉が乾いたな。
飲み物ないかな。飲み物。
この際なんでもいい、あったかくても、冷たくても、なんでも。
もう理性なんかない。まともな判断もない。正義も悪も何も残ってない。
「なんで僕のことそんな目で見るの?」
いつの間中姫さんの上に馬乗りになっていた。
鎖に繋がれてたはずの体も、完全に自由になっていた。
一瞬前のことでさえ、何があったかもうわからない。ただ気持ち悪いのと喉が渇いたのと…興奮と悲しみと怒りと声が私の中で入り混じっていた。
「おいしそう。」
姫さんの腕にそっと伸びる青い管。
おいしそうだな、って思った。思いっきり噛み付いたらきっと、とろりと赤い飲み物が喉を潤していくんだろうな。
すらりと白いそこに、歯を食い込ませようとして、止めた。
「…っ。」
私は、自分の腕を噛んだ。
強く、血が滲んでも噛み続けた。
頭の中では相変わらず何かが怒鳴り続けていたけど、その痛みで少し冷静になった。
口の中に血の味が広がる。美味しい。甘くてとろける、果実みたいな味が口に残る。
もう何が何だかわかんない。最悪だ。
「私はこんな力…欲しくなかった…。」
また酸っぱい味がして、何かが口から溢れそうになる。
私はとっさの判断で転がるように姫さんの上から退いた。
もうぐちゃぐちゃ。なにもかもぐちゃぐちゃ。
吐ききって入れ替わる思考に身を委ねる。頭がいたい。もうなんか、ほんとむり。
目を閉じているとだんだん、黒い布が落ちてくるみたいな感じになって。
あぁ、死ぬのかも、なんて思って。
ぷつん、と途切れた。
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神咲のあ(プロフ) - ももさん» ももさん、初コメありがとうございますー!!!ほんとに励みになりますありがとうございます。亀更新ですが是非是非これからもよろしくお願いします!!! (2018年4月13日 9時) (レス) id: 0cca539cb5 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 初めてのコメント失礼します…!いつも続きの展開が気になってソワソワしてます(*´u`)無理なさらず頑張ってください…!応援してます! (2018年4月5日 21時) (レス) id: 514ce4152b (このIDを非表示/違反報告)
くりふわ@想伝(プロフ) - ああああああああああああああ天月すん!!!嬉しい!!!やばい!!(語彙力)取り敢えずありがとうございます!!!!!!!!! (2018年3月16日 19時) (レス) id: 77ed961b3e (このIDを非表示/違反報告)
神咲のあ(プロフ) - ヨワムシうさぎさん» ではツイッターにリプ送らせていただきますね! (2018年3月16日 15時) (レス) id: 0cca539cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ヨワムシうさぎ - 神咲のあさん» えっと、URLの貼り方というかそもそもURLがなんなのかわからないのでツイッターでよろしいでしょうか? 私のアカウントは「月夜の黒兎 @blackrabbit9603」です。 (2018年3月16日 15時) (レス) id: 9999d2d00f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神咲のあ | 作成日時:2018年2月12日 18時