ヒロイン!129 ページ39
姫さんは一通り私を罵ると、気が済んだのか端末をいじり始めた。
なんでもいいけど、姫さんの顔見るのもなんか嫌だし出て行きたいな。
まぁそんなこと思ったって出られないけど。けど、姫さんの隙でもつければあるいは。
姫さんは端末から目を話すと、どこからかシリンジ…注射器を二本取り出した。
注射器には真っ赤な液体が満ちている。
姫「あんたにはしばらく
真っ赤な液体の正体は、きっと血だろう。それ以外ありえない。
どうだっていいや。ただ疲れるだけだし、どうせ。
それに、もしも強いヒーローの血だったらここから脱出できるかもしれないし。
注射器の針は今時見たことないくらいの凶悪な太さで煌めいていた。
まず一本、ぐさりと消毒すらされずに針を刺される。
体が熱くて、動悸がする。
脳裏に浮かぶのは『溶かす』力の使い方。
あー、使えるかもしれない。
もう一本、針が体に入る。
その時、なぜか私はこの血を知っていると感じた。
「どうして。」
手のひらを、地面へ向ける。
「おかあ、さん。」
地面のコンクリートがそっと焼けた匂いを放つ。
「こっちむいて。」
口からぽろぽろと言葉がこぼれて行く。
思考が、乗っ取られそうになって行く。
この血は…坂田さんの血だ。
血の声が頭を埋める。
2人の声が聞こえる。
坂田さんだけじゃない、別の人の声も。
別々の人に、別々の内容を怒鳴られてるみたいな感覚。ただ怖くて、苦しくて、どちらの内容も少しずつしか伝わってこないけど頭がぐしゃぐしゃになる。
「やめて、坂田さん。」
手錠を溶かして脱出できる。その力はある。あるのに。
もう立つことすらできない。
何かを考えて、じぶんであることが精一杯。
「ゔぁ、ぁ゛、ゔ、」
姫さんが何か言ってる気もする。
でもわかんない。どうでもいい。どうでも、いい。おかあさん。こっちむいて。ちがう。俺が悪い。やめてよ。私、わたし、ぼく、わた、おれ、ぼく、わ…。
大きな声で叫んでいるんだと思う。自分の声すら聞こえないほど、記憶の声がうるさい。
そっと焼けるような痛みが喉に走っていた。
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神咲のあ(プロフ) - ももさん» ももさん、初コメありがとうございますー!!!ほんとに励みになりますありがとうございます。亀更新ですが是非是非これからもよろしくお願いします!!! (2018年4月13日 9時) (レス) id: 0cca539cb5 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 初めてのコメント失礼します…!いつも続きの展開が気になってソワソワしてます(*´u`)無理なさらず頑張ってください…!応援してます! (2018年4月5日 21時) (レス) id: 514ce4152b (このIDを非表示/違反報告)
くりふわ@想伝(プロフ) - ああああああああああああああ天月すん!!!嬉しい!!!やばい!!(語彙力)取り敢えずありがとうございます!!!!!!!!! (2018年3月16日 19時) (レス) id: 77ed961b3e (このIDを非表示/違反報告)
神咲のあ(プロフ) - ヨワムシうさぎさん» ではツイッターにリプ送らせていただきますね! (2018年3月16日 15時) (レス) id: 0cca539cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ヨワムシうさぎ - 神咲のあさん» えっと、URLの貼り方というかそもそもURLがなんなのかわからないのでツイッターでよろしいでしょうか? 私のアカウントは「月夜の黒兎 @blackrabbit9603」です。 (2018年3月16日 15時) (レス) id: 9999d2d00f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神咲のあ | 作成日時:2018年2月12日 18時