ヒーローがログインしました！season2【歌い手】

ヒロイン！６８ ページ22

診察も終わったので「少し寝かせてください」というと、1人にしてもらえた。

「…こわ、かった。」

かたかたかたかた、と手足が震えた。

怖かった。

本当は、怖かったの。

戦うことが、怖かった。

死ぬのが、怖かった。

戦いが終わった今だからこそ、自分に素直になって言える。

『怖かった』。

ぼたぼたと涙が出た。

まふまふさんの力を使ってEveさんと戦っているときも、本当は逃げたくてたまらなかった。

それでも逃げなかったのは、逃げても捕まって殺されてしまうという諦めに似た何かがあったからだ。

姫さんたちのところに戻ったのは、まふまふさんの『覚悟』に胸を打たれたから。

私は覚悟もなくて、ただ甘えてただけだって確かに思った。でも、怖いものは怖かった。

色の変わってしまった右目。

今は眼帯に塞がれている右目。

一歩間違えてたら失明してた。

…怖い。怖い。本当に怖い。嫌だ。

怖すぎて、自分の目なのに鏡に映るのが嫌だと思った。

その右目の色こそ、自分がたくさん人を殺したという証にすら見えた。

「うぅ…ひっ…ぐ、う、ぅぁ…。」

涙が頬を伝って枕に染み込んで気持ち悪い。

それでも涙は止まらない。

本当に、怖いしか言葉が浮かばないくらい怖かった。

？「…あんま泣かないほうがいいよ、目が腫れる。」

キィ、と扉が開いて、まふまふさんが入ってきた。

…あぁ、1番見られたくない人に泣いてるところを見られてしまった。

弱いところを見せたら、嫌われちゃうから。

なんでこんなタイミングでくるの。

「なんですか、まふまふさん。忘れ物でもしました？でもここにはなにもないですよ。」

出来るだけいつもと同じようなテンションと声で話しかけてみるも、泣いたせいで鼻声だった。

まふまふさんはあからさまに眉をひそめた後、そっと覆いかぶさるように抱きしめてきた。

「ちょ、は？なに…」

混乱してまともに喋れない私をさらに強い力で抱きしめてくるまふまふさん。

…なんなの、一体。

ま「…ごめん、無理させて。そらるさんたちのこと、守ってくれてありがとう。」

私はこんなまふまふさん知らない。

まふまふさんは、感じが悪くて、でも時々姫さんから庇ってくれて、戦う覚悟がちゃんとしてて、それで…

こんな分かりやすく優しくしてくれるまふまふさん、知らない。

震える手でそっとまふまふさんの背中に手を回すと、ぎゅっと抱きついた。

きっとこれは夢。夢じゃないけど、そうゆうことにして甘えよう。

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