ヒロイン!66 ページ20
ぎゅう、と頬をつねられる感覚で目が覚めた。
ベッドサイドにはそらるさんとまふまふさんとうらたさん。
びく、と体が震えた。
…あぁ、この感覚、あれか。
意味もなく人に怯え、意味もなく辛く、意味もなく苦しくなる。
『僕が殺したんだ』
頭の中で何度もその言葉が繰り返されていた。
ま「起きたならはやく触ってよ。」
まふまふさんが面倒臭そうに手を差し出してきた。
そらるさんとうらたさんはなんのことやらわからなそうにしている。
でもまふまふさん、わたし、体動かないんですって。
そう言おうとして、止まった。
…このひと、弱い子ぶる子が嫌いなんだっけ?
う「まふ、だめ。こいつ、まだ動けないんだよ。」
諭すようにうらたさんが言うのを見て頑張って手を持ち上げようとするけど、一向に動かない。
ま「っでもこいつが触らないと力が解除されなくて、苦しむのは…!!」
あああ騒がないでください2人とも、声、頭に響いて、きもちわる…
「げ、っぉ、げほっ、ぅ゛、あ゛、」
どうにか吐きそうなのを堪えるけど、やっぱ頭は痛いし。
脳内で響く声がだんだん大きくなってきて、飲み込まれそうになる。
「ぼくが、ぼ、まふ、や、ぼくが、」
やめて、まふまふさん。
確かにあなたが殺したことには変わらないけど、あなたがどうこうしたらあの人が死なずに済んだとかはないの。
だから、もう、やめて。
泣きたいのに、人の視線が怖くて泣けない。
こんなに、苦しかったんですね。
がっと腕を掴まれて、痙攣する指がまふまふさんに触れた。
「ぁ…っ」
コウモリがまふまふさんに吸い込まれるのが見えた。
その途端、世界がすっきり見えるようになった。
そ「…なに、あれ…光る、こうもり?」
ぽかん、とするそらるさんとうらたさん。
…わたしに聞かれても困るんですよねそれ。
まふまふさんは、黙っていてくれた。
わたしが首を振ると、2人ともまあいいや、みたいな感じになって笑ってくれた。
う「じゃ、診察始めるから2人とも出てって。」
うらたさんが2人を追い出した。
包帯でふさがった右側の視界。
うらたさんが右側に行くとなにをしているかわからなくて少し怖かった。
きゅ、と、手を掴まれた。
戦地でされた時にはなかったその感覚が、今はあった。
「うらたさん、あったかいです。」
そういうと、うらたさんは驚いたような声を上げてからくすりと笑った。
う「…あたりまえだろ。無茶しやがって。」
その声は泣いている気がした。
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PaiN(プロフ) - 初コメント失礼します! いつも楽しみに拝見しています。様々な視点からのストーリー展開や、登場人物の心情など読みごたえがあってとても好きです!!これからも応援しています。更新頑張って下さい!! (2018年1月22日 23時) (レス) id: 7643d58d7b (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり - 初コメ失礼します。少し気になったのですが、80話では主人公ちゃんの髪がラベンダーアッシュと描かれているのに対し、83話ではブルーアッシュと描かれていて、どっちなのかなー?と思いました。演出だったらすみません。更新頑張ってください。楽しみにしています! (2018年1月22日 22時) (レス) id: 7ecf9aae1c (このIDを非表示/違反報告)
96neko - 初コメント失礼します。更新頑張ってください! (2018年1月10日 4時) (レス) id: 35f8ab9167 (このIDを非表示/違反報告)
青いおにぎりちゃん(プロフ) - 面白いです!いつも更新楽しみにしています!ずきりが、図きりになってますよ!わざとだったらごめんなさい! (2018年1月9日 16時) (レス) id: 394a55dba2 (このIDを非表示/違反報告)
れる - 初コメ失礼します!こーゆー感じの小説大好物です。好きです(唐突)毎日のぞきにくるので更新頑張ってください!!楽しみにしています(´ω`)♭ (2018年1月7日 23時) (レス) id: e854100071 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神咲のあ | 作成日時:2017年12月19日 10時