ヒーローがログインしました！season2【歌い手】

ヒロイン！６２ うらたside ページ16

今俺が出てっても危険だなんて、百も承知だった。

けど、ヴァンプが動かないのを見たとき、どうしても動いてしまった。

う「ヴァンプッ」

がばっと荒々しく抱き起こす。

彼女は、死んだように右目をしっかり閉じて、だらだらと血を流していた。

でも、左目は、生きていた。

こちらを見て、くすりと笑うように歪んだ。

「…るすさんに、呼んだら力使うように言ってください。私は、まだ、」

左目は、生きて、いた。

まだ、諦めてない。戦う。…彼女の目はそう言っていた。

けど、もう戦わせられない。

ヴァンプの手をぎゅ、と握るけど、彼女は気がついていないみたいだった。

…地面に叩きつけられたとき、頭ももろに売っていたから、もしかしたら。

その間もヴァンプは握ってない方の手を鎌へと伸ばしているけれど、触れるだけで一向に掴めていない。

う「もういい、ヴァンプ。もう、大丈夫だから。もう、戦わなくていい。」

見ているこっちが、痛かった。

もうやめてくれ、そうとしか思えなかった。

俺、戦闘力ないからって戦わなかったんだよ？

ヴァンプが戦ってくれてる間も、俺が入っても邪魔になるだけだからって、見てるだけだったんだよ？

なのに、なのにヴァンプは、そんなにボロボロになっても、まだ諦めてない。

もう、きっとヴァンプの傷を全て直すことなんてできない。

もともと怪我してた左脚だって、見るからに腫れてる。

強打した頭は、きっと何かしら障害を残すだろう。

全力で能力を使っても、彼女が回復する兆しは一向にみえなかった。

一応るすに無線でさっきのヴァンプの要求を伝えると、あちらも結構混乱しているらしかった。

…『うらたくん正気なん。もう、止めなよ。ヴァンプ死んじゃうよ。』

るすだって、そう喚いた。

E「やっぱ最初に殺しとくべきだった、クソ女。」

ちゃき、と、銃口が何かにあたる音がした。

でも、今俺に体を支えられているヴァンプには、銃口は当たっていない。

姫「ぁ…っ…ぅぁぅ…ひぐっ…ぉぇ…」

しゃがみこむような体制で、おでこに銃を突き立てられていたのは、姫だった。

E「ねぇ、ヴァンプちゃんに何してくれてるの？…許さない。」

なんでEveはこんなにも怒ってるんだろう、むしろ敵軍死ぬんだから…とか思ったけど、すぐにわかった。

…イギリス軍は、ヴァンプを狙ってるってそらるさん達から聞いていた。だから、味方みたいに捉えてるのかもしれない。

「…めろ…」

小さく腕の中で声が聞こえた。

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