玉狛第二の逃走訓練�� ページ13
澤隊の隊室に設置されている訓練室に、五人は換装体で向き合っていた。
そして周りを囲むのはスタンダードな街並み。
「じゃ、お前らが逃げ始めた三分後に俺たちはここから動き出すからな。ちゃんと逃げろよ」
澤は腕を組んで玉狛第二の三人の顔を交互に見ながらそう言った。「はい」と返事をした玉狛第二の三人だったが、澤の隣に立つ人物が気になって仕方なかった。
『...何見てんの。』
かなり不機嫌な顔をしている朝香だ。そして、その声はいつもの凛としたものではなくこもった鼻声。綺麗に整った鼻筋にはシンクロ選手などが使用するノーズクリップがこれでもかと存在を主張している。
何故ノーズクリップをしているのかと言うと、勿論SEの所為である。今回の練習において、朝香の強化嗅覚は不必要な要素でありどう取り除くか考えた結果これに辿り着いたのだった。何故ノーズクリップが手元にあったのかは謎だが、澤が取り出した辺り大方迅の仕業なのだろう。
「偶にはいいんじゃないか？口呼吸」
『口呼吸で良かったことあります？』
朝香は違和感しか無い鼻先に少し触れたあと、小さくため息をついた。彼女ももう高校を卒業する、こんな事で一々駄々を捏ねている訳にもいかない年齢だ。
「それじゃ、始めるぞ。
よーい、スタート！」
澤の声を合図に、玉狛第二の三人は散っていった。
ランク戦会場と比べ幾分か狭い訓練室で逃げ続けるには限度があるが、この二人から五分逃げ切れれば上出来だろう。
そして、訓練室に三分経った事を告げるブザーが鳴る。
「さて、行くか」
『今回私探索役に立たないので頼みます』
「おう、任せろ」
こうして澤と朝香は走り出した。
･
雨取は本番を見据えて狙撃ポイントを確認しながら逃げていた。先程の闘いでは朝香のSEの元に為す術なく秒殺をされたが、今回はそれは無い。
ただ、SEが無いとしても相手は元A級2位。その実力は朝香のSEだけでは無いだろう。
「あっ...」
澤の姿を確認した雨取は、周りを確認しながら場所を移動しようとしたその時、突然の浮遊感が雨取を襲った。
「え！！？」
そして雨取の両脇には、黒色の手袋に包まれた細長い手が差し込まれていた。
『雨取さん確保〜』
鼻声のせいか何時もより幼い声が雨取の後ろで響く。雨取が振り返ると、そこには自身を持ち上げたまま変わらない表情で立つ朝香がいた。
〈雨取ちゃん、1分18秒よ〉
名塚の落ち着いた声が、訓練室に響き渡った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 291人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にこ(プロフ) - この度はこんなにも素晴らしい作品を作成してくださりありがとうございます（ ; ; ）出会えたことにとても感謝しております！他の作品も楽しみにしております！完結までお疲れ様でした＾＾ (2022年1月31日 0時) (
レス) @page32 id: 122cc99496 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - 綺世さん» 楽しみにしてます！(*´꒳`*) (2021年11月2日 16時) (レス) id: 60475fc3e4 (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - そるとさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！また作品を出した際にはよろしくお願いいたします。 (2021年11月2日 11時) (レス) id: d271d60620 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - ワールドトリガーで一番好きな作品だったので完結したのがとても嬉しい反面寂しい気がします、次作も楽しみにしてます！ (2021年11月2日 7時) (レス) @page32 id: 60475fc3e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：綺世 | 作成日時：2021年8月11日 3時
