一万やるから、ハグさせて【五条悟】

10.一緒に居れたらそれだけでいい(訳ないよね) ページ10

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狗巻side





A「やっほ、棘くん。」


狗巻「!!た、かな。」



咄嗟に返事をして裏返ってしまった声を隠すように口を押さえる


こんなの同期の奴らに聞かれたら終わりだ。一生からかわれる。



周りを見ても、人影は先輩以外はなかった。


ほっと胸をなでおろす。




何でもない、と首を振ると、



不思議そうな顔をしながらも、先輩は隣に並んで腰かけた。




川崎先輩は、高専には珍しく後輩に声をよくかけてくれる人だった。

初めて会った時に、こんな可愛らしい人が先輩だと思わなくて

同い年扱いしてしまった時も、笑って許してくれた。




A「棘くんは今から特訓？」


狗巻「…おかか。」


A「あ、もう終わっちゃった？」



携帯を取り出して、『休憩中』と打つと、なるほど、と頷いてくれた。




A「どんな特訓してるの？」






どんな？




おにぎりの具でしか話せない自分に、今、そう聞いたのか



どうしよう…打ってたら長くなりそうだ…







とんとん


先輩が指で携帯をつついた。




A「打って答えるので、いいよ。その間、待ってるから。」




先輩の髪が、風で少しなびく。




A「文字を打ってまで会話してくれるのってなんかすっごく特別な感じがして



いつもと違う会話のテンポとか私は結構好きなんだ、棘くんと話すの。





あ！答えたくなかったら、ごめんね？」


狗巻「、おかか！」





画面を見るために先輩が近くに寄ってくる。


いつもよりも近い距離に、心臓が大きく鳴った。




A「あー、なるほど…私もやってみようかな。


棘くん、今からでも一緒にやってくれる？」



狗巻「しゃけ。」



A「やった。ありがと。」




この人のそばは




じゃれあえる友達とは違うけど、居心地が良くて




空気や、雰囲気なのかな







でも、先輩は…皆に優しいから。



自分だけではないってことに、勝手にへこむ。






他の人に、取られちゃうのかもな…







A「棘くん、元気ない？」



狗巻「お、かか。」



A「そう？何かあったら頼ってね。私、先輩だからね。」



狗巻「…おかか」

A「え、先輩でしょ？」

狗巻「おーかーかー。」

A「えぇー、悲しいなぁ。」





今は、このまま、長く居れたらいいなって



思うことしかできない。






*

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