気分屋さん日和。【木全翔也】

27話 ページ27

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木全「……」

「…っ」




今年で一番きまずい沈黙。


今日ほど消えたいと思ったことはない。

いっそ殺してくれ。



いまさら「でひゅ」を訂正するには遅すぎるし、
私が話すターンでもないので口を開くこともできない。




お願いだから何か喋って先輩。


不思議の森の番人・ショーヤキマタさん、

いま動かずしていつ動く？







暫く黙り込んでいた翔也先輩が
ようやく口を開いてくれたのは3分後くらい。

体感では3時間待った気分だ。







木全「えっと…冗談？」

「はあ？」

木全「あっ、ごめん」

「なんで私あんな恥ずかしい台詞を冗談で言わなきゃいけないんですかしかも噛んだんですよッ?!」

木全「そ、そうだね。うん…」





「噛んでたもんね…」と呟く翔也先輩。


違うそこじゃないってツッコみたかったけど

自暴自棄になる手前だったので
一旦心を落ち着かせることに専念する。




…なんか変な気持ち。




さっきまであんなにドキドキふわふわした気分だったのに。




やっぱりこの人の隣は落ち着くんだ。


この人のせいであんな緊張してたんだけども。







木全「…その、勘違いだったらごめんなんだけど、」

「？」

木全「……お付き合い申し込まれました？ぼく」

「……なんでそんな自信無いんですか。逆に虚しいんですけど」

木全「いやっ、いや、ごめん。違くて。
その、…Aちゃんがそんな話をするとは思わなくて」

「え？」

木全「だって、ずっと…あの男の子と付き合うと思ってたから…」






語尾の弱い声。




言葉を繋ぐたびに頬を触ったり
頭を手で抑えたり落ち着かなくて

気になって顔を見れば耳まで真っ赤なお顔。




初めて見るその顔に

落ち着いていたはずの心臓がまたまた跳ね上がる。







木全「ゎ、わ、待って…。
俺あんま、こういうの慣れてなくて…っ」

「な、なんも急かしてないッス」

木全「そ、そーッスよね、ウッス」

「……」

木全「…な、なんか喋ってよ」

「え?!い、今は翔也先輩のターンですよっ」

木全「ゃ、きまたは戦闘不能だから、無理です」

「そんなんだめですよ、ちゃんとやってください」

木全「ぅ〜…」









手の甲で口元を隠してる。



座るとちょっと猫背になるから

私のほうが少し視線が高い。





一つ一つの仕草も、見える先輩の顔も、声も、

なんだか今日は酷く愛おしく感じてしまう。







翔也先輩はちらりと私の顔を伺った。




潤んだ瞳に私の顔が見える。

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