気分屋さん日和。【木全翔也】

26話 ページ26

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頑張って頑張って走って走りまくって

やっと追いついたのは駅の改札口の前だった。



追いついた、というより
私の気配に気づいて翔也先輩が止まってくれてたって感じ。





息も絶え絶えな私に翔也先輩は「どうしたの…」と
びっくりした様子で聞いてきた。






「ハァ、しょ、っは、しょうやせ、っげほごほッせんぱッ、は、っ」

木全「…死にかけ？」

「元きた、げほっ…帰宅部ですから私…っ…」




翔也先輩が背中を擦ってくれたお陰もあり
すぐに息を整えることができた。


それにしても、こんなに全力疾走したのは久しぶり。

明日は筋肉痛不可避。




木全「大丈夫？落ち着いた？」

「ふぅ…お見苦しいところを見せてしまってすいません」

木全「ゾンビに追われてるかのごとく迫力だったよ」

「……走り方変なのは自覚してます」

木全「それで、どうしたの？俺に用があるん…だよね？」





酸欠だった脳みそがゆっくりと回復していくのがわかる。


改札口の前で立ち続けるのも邪魔になってしまうので、
私達は一旦中に入ってホームのベンチに座ることにした。





「あのですね、一つ誤解があります」

木全「誤解？」

「私、徹くんとお付き合いすることはありません」





そう言い切ると、翔也先輩はぱちくりと目を瞬かせた。




木全「え？え？だってさっき校門の前で
『好きって言ってもいい?』って聞かれて
『いい』って言ってたよね…？」

「あ、それ私にじゃないです」

木全「へっ」

「もう一人のマネージャーの子に、です。
私は徹くんにキューピットを任されまして」

木全「きゅーぴっと…」

「だから、徹くんと幸せになることはありません」

木全「……僕の勘違い？」






ハッ！と頭に手を置いて
がっくり項垂れる翔也先輩。


そしてすぐにまた顔を上げて、
私の顔を見るなり「あ！俺！」と叫んで
また頭をおとした。



…こんな激しく動く先輩、レアかもしれない。





木全「待って、俺早とちって変なこと言った…？」

「…」

木全「ゎ、わ、どぉしよ…」

「…先輩」

木全「な、なに？」






あわあわと慌てる翔也先輩に体を向けて呼ぶと

怯えたように私を伺う。



何もそんなモンスターを見るような目で見なくても。







「ゎ、私、…その……」

木全「…？」

「翔也先輩と、……ｯ幸せになりたいでひゅ」

木全「え」






…噛んでしまった。





ただでさえ恥ずかしい台詞を吐いた上に


「でひゅ」って。









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