気分屋さん日和。【木全翔也】

20話 ページ20

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練習が終わり、いつものようにジャグを洗ってると
同じく練習終わりの木全先輩が声をかけてくれた。


前髪を上げるようなちょんまげスタイル。






「お疲れ様です」

木全「おつかれぇ。今日あちーね」






木全先輩は隣りで水道に寄りかかると
おもむろに蛇口をひねった。


そして水の勢いを手で塞いだりした遊び始める。


…いつも思うけどやることが唐突だな。






木全「なんか、マネージャーっぽくなったね」

「そうですか？それは嬉しいかも」

木全「……」

「？ 木全先輩？」





不意に黙り込む先輩。


なんだろう、とそちらを伺うと
下から私の顔をじっと見上げていて。




いつもは目にかかる前髪がないから
しっかり目線が交わる。


Tシャツの隙間から見える鎖骨が浮き出ていて、
なんとなく色っぽい。




先輩は何かを確認しようとしてるのか、
無言のまま手を伸ばしてきた。


そして私の髪をゆっくり耳にかける。







「……へっ」


木全「やっぱ顔周りの髪で印象変わるね」


「え、ぁ、はい」








なんともないように小さく笑って、
満足そうに体を起こす。







……びっくりした。




手の動き方とか、目線とか、色々が、


なんというか……"大人の男の人"。





ぼんやりしてる先輩でもなくて、

食べ物に食いつく先輩でもなくて。



初めて見たその表情に落ち着いてはいられない。






成宮「A〜！今日も一緒にかーえろ！」

「ええ、あー…」

木全「じゃぁ、またね」

「あっ、はい。お疲れ様です」






徹くんが体育館から飛び出してきたところで
木全先輩はサッと部室の方へ歩いて行ってしまった。



…なんだろ。ホッとしてる自分がいる。






成宮「俺もしかしてあの先輩に嫌われてる？」

「最初にデリカシーないこと言ったからだよ。
っていうかもう徹くんサナコと二人で帰れば？」

成宮「やだよ！恥じーもん」

「じゃないといつまで経ってもサナコは意識しないと思います」

成宮「…Aが言うならガチだな」





さっきまでおちゃらけていた徹くんは

急に静かになっていく。



…本当にサナコのこと好きなんだな。徹くん。









「変なノリしなければ普通に話せるよ」

成宮「俺恥ずかしくなると空回りしちゃう」

「恥ずかしがってていいんじゃないかな。
あとサナコは渋くて大人な人が好きなんだって」

成宮「俺と対極じゃん」

「自覚あったんだ…」







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