あ の 子 の 弱 点 。【豆原一成】

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俺の足の間で小さく縮こまるAさん。


後ろから見えるわけもないのに
手で顔を覆っていて、

時折「ぅー…」なんて呻いてる。




彼女のお腹のあたりに腕を回して抱きしめてるから

どんなに頑張っても俺のせいで逃げれないね。





「もう心臓が死んじゃいそうです…」

豆原「それは困るんすけど」

「鬼…」




少し上にずらせば胸に当たってしまいそうで、

好奇心と理性が喧嘩しているのをこの人は知らない。



けどそんなことして嫌われたくないし、

気を紛らわせるために彼女の肩に頭を預ける。






豆原「…俺、Aさんのこと好きですよ」

「えぇｯ?!」

豆原「マネージャーだから、はもちろんすけど。
女の人として」

「え、ぅ、でも、」





分かっている。


Aさんは俺達のマネージャー。



私情を仕事に持ち込んでしまったら、

困らせてしまうだろうし

蓮くんの言うとおりこの人は仕事を辞めなければ
いけなくなってしまうかもしれない。




それは困る。とても困る。






体の中にすっぽり収まるAさんは
ずいぶん華奢で、

こんな小さい体で俺達の事支えてくれてるんだな
って思うと愛おしさすら感じてしまった。






豆原「わかってます。ちゃんと我慢します」


「我慢って…」


豆原「でも…仕事が終わったあととか
オフのときとかだけでも、

独り占めさせてください」







顔が見えない彼女がどんな表情をしているのかわからない。


けど、首筋や耳は真っ赤で。



最初こそは抵抗しようとしていた手が
今はもう俺の腕をぎゅっと掴んでる。









豆原「…ちょっと。無視？」

「ゃ、…頭が……回らないです…」

豆原「とりあえず『OK』って言っときましょ？」

「『とりあえず』で了承しちゃ駄目って
研修のとき偉い人が言ってたもん」

豆原「はぁー。真面目な人」









＿＿＿＿『完璧』。



＿＿＿＿この言葉は、彼女によく似合う。







いつも先回りして動いてくれて、

第一に俺達のことを考えてくれていて、

ミスもなく仕事をこなしてくれる。





そんな彼女にはたった一つ、

『弱点』があって。









ちゃんと承諾してくれないので
抱きしめてる腕を少し上にずらしてみる。


くすぐったのか「ひょわ」なんてジタバタした。


…手に柔らかいものが乗っかってますが。









「ううぅ、わかりました…」

豆原「ありがとうございます、Aさん」

「…恥ずか死んじゃう」

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