鶴の照れ隠し。【鶴房汐恩】

《３９》 ページ39

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木全「ねぇ！あれどういうこと？！
二人付き合ったの？！ねぇねぇねぇ？！」




クラスの列に戻った瞬間
喜々満面とした翔也が駆け寄ってくる。


そういえばちゃんと報告してなかったっけ…。




「隠してたわけじゃないんだけど、その、まぁ…」

木全「うっわぁー！やっとかぁ！！」

鶴房「そんなテンション高なる？」

木全「なるよぉ！ハラハラしてたもんこっちは！」

「その説はご迷惑おかけしましたね…」




衣装の尻尾がもう今まさに動くんじゃないかと
いうくらい嬉しそうに笑ってくれる翔也。


ずっと見守ってくれていた彼が
こんなに喜んでくれるなんて、泣きそうだわ私。




しかしこのあとすぐダンス部による
アフターショーが始まるので、

のんびりしているわけにはいかない。



汐恩は「行ってくる」とだけつぶやいて
席を外れてしまった。





木全「にしても汐恩があんな大胆なことするのは意外だったなぁ」

「んね。びっくりしちゃった」

木全「たぶん相当嬉しいんだよ。
頑張って平然保ってるみたいだけど！」

「そうかぁ〜？？」

木全「俺にはわかるね」




ふふん、とドヤ顔の翔也。


「そういえば何人かに告られたんだっけ？」と
聞いてみた瞬間いきなりあわあわと慌てだした。



どうやらガチ恋勢王子は本当らしい。





「……」

木全「A？」

「なんか、実感沸かなくて」

木全「そうなの？」

「今まで付き合ってきた人たちとは
全然違うから。…なんだろ、なんていうのかな」

木全「でもきっとこれから“当然”になるよ」

「…そうかな」

木全「その“当然”が、“大切”になるんだよ」

「……誰に聞いたの？」

木全「神！」







にんまり。



なんだかあれこれ考えてる私が馬鹿みたいだ。




全身の力がドッと抜けたところで
体育館の照明が消える。


ダンス部の発表が始まるのだ。









「…………」









＿＿＿成宮って、色々下手くそやな。





初対面にしてド失礼。


何だこの男は、とめちゃくちゃ険しい顔を
してしまったあの日が懐かしい。




宇宙人みたいに予測できないことばかりで、

怪獣みたいに勢い任せ。




それでいて、時々、優しい。


優しいくせに、優しくないふりもする。







不器用なところも。

顔を真っ赤にしてくれるところも。

言葉を伝えようとしてくれるところも。




……なにより、私を見ていてくれるところも。









「…大好き。……汐恩」









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