可愛い幼馴染はもういません。【川西拓実】

20話 ページ20

.









「うわっ、真登間さんどうしたんですか！」

「あ…中村さん、オハヨウゴザイマス」

「今日企画の撮影日ですよ？！
テンション上げていきましょう？！」

「うー…」




そう、今日は大事な企画の撮影日。


デザイナーとしてカメラマンさんたちと
より良いものを作れるよう話し合うので
とてもとても大事な日。



…なのに、完全に寝不足である。





いつも頭にフラッシュバックするのは、

拓実のあの言葉。





『Aだけ』


『俺が優しくするの』







「どういう意味なんだそれはぁ〜…」




あんな特別扱いにときめかないわけがない。


そう、私は完全にどぎまぎしてしまっている。


現役JKと一緒にはしゃいでしまうくらいに、だ。





「なにかお悩みならお話聞きますけど、
今はどうかお気持ち切り替えて！
真登間さん頼りなんですからね！」

「うぁい」





不意にスタジオの外が賑やかだな、と
思った瞬間スタッフさんの「到着されましたー」の
声が響きわたった。


ぎょっとして振り返ると
JO1の方々が丁寧に挨拶をしながら入って来ている。




……もちろん、その中には拓実の姿も。







「きゃーー！ホンモノ！！
いやもう生きててよかったぁぁ…！！！」

「ワタシチョットお手洗い」

「ええっ？！もう始まりますよ？！」

「すぐ戻るんでっ！」




やばいやばいやばいやばい。



心臓がおかしい！だめ！これは！

幼馴染にキュンキュンするとか…！





「うぁぁーーーっ！！」





無理やりほっぺを叩いて鏡越しに自分を睨む。


そうだ。仕事に集中しなくては。



拓実のあの言葉は、深い意味とかなく、

ただ彼の優しさ。うん。




今日は仕事だけ。


直接話すことはない。大丈夫。大丈夫。






大丈夫。









.









「真登間さんチェックお願いしまーす」




順調に撮影が進み、
カメラマンさんと撮影チェックに入る。


仕事が始まれば勝手に頭が集中してくれてるので
よかったな、と思った瞬間。



画面に映るのはバチバチに雄な顔をした拓実。


写真だとわかっていても、その目線に
貫かれてせっかく落ち着かせていた
心臓が警報を鳴らしだす。





「川西さんも問題なさそうっすね。
真登間さん？」

「あいｯ！」

「見えてます？」

「見えてます！！」

「いやそれ見えてないでしょう」





思わず書類で目を隠す私を
スタッフさんが困ったように笑ってる。








こんなの無理だって…！



.

21話→←19話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す