6話 ページ6
.
サバイバー A。
ファミリーネームは不詳。
役職も不詳。
出身地、階級、生涯、不詳。
Aがこの荘園にやってきたとき、
俺達に配られた資料の内容だった。
“不詳”と書かれていたわけではなく、
内容のほとんどが黒く塗りつぶされてあっただけ。
セルヴェは怪しいの一言に尽きた。
もちろん俺も同じ。
参加するゲームにおいて、仲間同士の信頼関係は
大切であり、必須であった。
「Aです」
そいつは、やはり自分の名前しか口にしなくて、
淡々と自己紹介をするとあっさり部屋に戻ってしまった。
仲間内は酷く不安げで、果たして
ゲームをきちんとこなしくれるのか分からずにいた。
初めてAが参加したゲームは
サバイバーの勝利だった。
ハンター側の情報の少なさもあって
Aが不意打ちだったという。
共に参加したウィリアムは「すごかった」と
鼻息を荒くしていた。
聞いたところによると
Aは回復補助型のようで、
ダイアー先生も目を引く治療技術だったらしい。
「 ……ナワーブサベダー…？ 」
調査も含めて初めて自己紹介をした日、
酷く驚いた顔をしたAを今でも覚えている。
驚愕に満ちた顔は少しだけ唇を結ぶと、
やがて今もよく見るあの力の抜けた笑顔になるのだ。
「 やっと見つけた…… 」
嬉しそうにはにかんで、きゅっと俺の腰に抱きつく。
通りすがりのアユソとウィリアムの
騒ぎ様は尋常ではなかった。
「なんでだよ！」と問い詰められたが
聞きたいのはこちらの方。
グルカ兵にずっと身を染めてきていたので、
女子供とはほぼ無縁だった。
…いや、巻き込まれた人間を含めれば
完全に関係がないとは言えないか。
だが、誰かにこんな嬉しそうに抱きつかれるような
人間ではないことを俺自身がよく知っている。
コイツは何者なんだ。
一体、目的は。
そうして今日もまた、Aの部屋に忍び込んだ。
仲間内を疑うなどあまりしたくはないが、
今回は訳が違う。
なぜAは俺を知っていたのか。
なぜ、探していたのか。
知らなければいけないと思った。
.
今日もまた、手がかりはゼロだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Shiu(プロフ) - フルグラ、リ傭・オフェ傭推しさん» コメントありがとうこざいます！甘くするぞ！という目標で書き始めたのにすでに甘くない…！どんな終わりになるのか自分でも想像つきませんが、楽しんでいただけるようがんばります！ (2020年9月30日 21時) (
レス) id: 3e168f23de (このIDを非表示/違反報告)
フルグラ、リ傭・オフェ傭推し - わーい！ナワーブくんだっ。更新頑張って下さい(´▽｀) (2020年9月30日 19時) (レス) id: d8c098f262 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Shiu
| 作成日時：2020年9月27日 3時
