キツネへ嫁入りしませんか。【川尻蓮】

13話 ページ13

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三年「いま右側遅れてた！もっかい今んとこ流しで！」







想像はしていたけど、ついていくので精一杯。

鏡に映る自分の顔だけ険しくて、
こんなのでステージに立てるわけがないと
自分が一番わかっていた。



ダンスフェスティバルまで1ヶ月ほどの
猶予はあるといえど、余裕が生まれるわけでもない。





もっとうまく。

もっと速く。


もっとできるようにならなきゃ。






有川「Aちゃん顔怖いで」

「あはは…」

有川「あんま詰め込みすぎんのも良くないからさ。
気分転換に今日晩飯一緒にどう？」

「あー…ごめんもうちょっとだけ練習してから帰りたくって」

有川「そう？ほんま無理すんなよ」

「ありがとう」





今までも早いわけではなかったけど、
ほぼ毎日一人になるまで残って練習を続けた。


蓮くんかみっちゃんが声をかけてはくれるけど
でも優しさに甘えてはいけないと思う。









「ふー…」





良くなってきてはいる。

それでも、まだ。



不意に音楽が止まり、代わりに着信音が鳴り響く。


相手は拓実だ。珍しい。





「はい？どうしたん？」

川西『姉ちゃん？今どこおる？』

「大学だけど…」

川西『まだ大学におったん?!』

「まだってそんな時間遅くないやろ？」

川西『もう9時前やで！
家帰ってくるの10時過ぎになるやん！』




え、と思ってレッスン室の時計を確認すると
確かに短い針はほぼ『9』の上に乗っていた。


ここのところ残り練習してるけど、
8時前後には帰っている。



そりゃ連絡もなく遅くなったら姉思いな弟は心配するよな…。





「連絡するの忘れとった。ごめんごめん」

川西『もぉほんましっかりして』

「お詫びと言っては何ですが、スタバ買って帰ります」

川西『そんなんええから早よ帰ってきてください』

「はい」






弟には敵いません。


大人しく返事をする私に
電話の向こうの拓実が満足そうに電話を切った。




部活で疲れてるだろうに心配させちゃって悪いなぁとか

ぼんやり考えながら汗まみれになったTシャツを脱いだ、



そのとき。







川尻「あっ…、」

「ｯｯ！！？？」






鏡に誰かが映ってる、と思ったら

呆然と立ち尽くしていた蓮くん。



鏡越しに目があって、

蓮くんは申し訳なさそうに手で目を隠した。








「な、な…！」

川尻「見とらん。見とらんよ」

「嘘だ…！」








思い切りTシャツを脱いでブラ1枚になってしまっていた。



お嫁に行けない…！

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