キツネへ嫁入りしませんか。【川尻蓮】

11話 ページ11

.







「あの、蓮くん」





着替え終えて大学の外に向かう途中、

前を歩く彼を見つけたので呼びながら走っていく。


蓮くんはすぐに気づいて「おつかれ！」と笑顔で迎えてくれた。





「さっき助けてくれてありがとうございました」

川尻「んーん！っていうか変な嘘つかせちゃってごめんね。
もしかして行きたかった…？」

「いやっ金欠怖いと思ってたので…。
でも断るの下手な人間だからすごく助かりました！」





もう一度お礼を伝えると、

蓮くんはにっこり笑って「それなら良かった！」。



せっかくなので途中まで一緒に帰らせてもらうことに。




いつも思うけど蓮くんは本当にスタイルがいい。






川尻「Aちゃんダンスサークルどぉ？」

「めっちゃ楽しい！新鮮！」

川尻「んふふっ、それは良かったぁ」

「早く蓮くんくらい踊れるようになりたいです」

川尻「なれるなれる！がんばろ！」





大学から最寄り駅まではバスか徒歩。


どっちがいいか聞かれ、
「金欠だから徒歩で…」とお願いすると
「のんびり行こっか！」と笑ってくれた。


本当に一つ一つの受け答えが優しい。






川尻「Aちゃんは本当に頑張り屋さんやね」

「え？そうですか？」

川尻「うん」

「やーでも、私って物覚え早いだけなんですよ」

川尻「でも練習しとるやろ？家とかでも」

「……わかるんですか？」

川尻「俺、人間観察には長けとるの」





ふへへ、と体を揺らしながら笑う。


無邪気な笑顔は練習中の真剣な表情とは全然違くて。





この人のことをいつか好きになるかもしれない


って、なんとなく思った。





でもそれを悟られて変な空気になるのは嫌だから

心の中で丸めて隅っこの方に捨てておく。








「蓮くんモテるでしょう」

川尻「なんで急に？」

「なんとなく」

川尻「Aちゃんは俺がモテると思っとるん？」

「めっちゃ」

川尻「んははっ！じゃぁそうかもしれんねぇ」

「大人の男の余裕だ〜」

川尻「なにそれぇ！でもAちゃんこそモテると？」

「蓮くんはそう思ってます？」

川尻「めっちゃ」

「じゃぁそうかもしれないですね」




そっくりそのまんま返せば
すっごい笑ってくれる。


笑いのツボが浅いのか、
もう本当にずっと笑ってて。





「笑いすぎです」って注意すれば

「Aちゃんのせいよぉ」とまた笑う。









そのやりとりが楽しくて、



やっぱりこの人のこと好きかもしれない、



と思った。

12話→←10話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す