甘 す ぎ 危 険 。【佐藤景瑚】

42話_his.story ページ42

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それから

俺は毎日放課後にパン屋へ通うようになった。



我ながらベタ惚れしてしまったなぁと思う。


好きになったら負け、とはよく言ったもの。




Aさんは俺の言葉にウンともスンとも
リアクションが変わらなくて、

ただそもそもの反応が大きくない人なのだと
気づいたのは少し経ってからだった。


俺のノリをあしらう割にはっきりと拒絶して来ない。


根本的に優しい人なのだと思った。



もしくは…なんて期待はしない。




だから、「彼女いるの？」なんて聞かれた日は
何度も勘違いしたくなる頭を悩ませられ続けた。



そんなことを知る由もない彼女は
次の日もいつも通り。

悔しいくらいに。







白岩「景瑚、最近なんか楽しそうね」





それくらいの頃、

瑠姫くんが大人な笑みを浮かべて俺にそう言った。


Aさんの話を一つも出したことないのに、
察しのいい彼にはモロバレみたいで。



楽しい…。

楽しい、か。

そうかもしれない。



パン屋を開ける前の緊張を
あの子はきっと知らないけど、

それでもいつか想いが届けば
教えてあげたいな、なんて。



Aさんのことを考えると
どうしてか落ち着かなくて、

早く会いたいのに
会いに行くとドキドキして。






…一つ厄介なことがあるとすれば、
最近やたら女子に付きまとわれてること。



絶対に二人きりで会いたいから
どうにか撒いてはいる…けど、

ついに先回りされていた。




店に入ろうか悩んでいると、
換気のために開けられた窓から
中の会話が聞こえてきて。






女子「けえごは女子みんなに優しいからね？
勘違いしないでくれる？」

「でしょうね。勘違いしてません」





…ちがう。


誰にでも優しくしてるわけあるか。



俺にとって特別なのはたった一人なのに。




まだ伝わってない。

伝えきれてない。



Aさんは俺にとって
大勢のうちの一人なんかじゃないし、

もうどんな言葉を使っても
表しきれないくらいのところまで来てしまってる。





散々叫んだ女子がパン屋から飛び出してきて、
俺の姿を見た途端に顔を青くし固まった。



…そんな顔するくらいなら

余計なことしなきゃいいのに。









佐藤「…俺、あの人に本気なの。



悪いけど、女子だろうがなんだろうが

邪魔したら容赦できないよ。



……二度とここに来んな」









それでも、こんなに思ってるのに



あの人だけにはなかなか届かないんだけどね。









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