甘 す ぎ 危 険 。【佐藤景瑚】

4話 ページ4

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明日の朝のぶんの仕込みと
お店の掃除を終えて、私服に着替える。


佐藤くんは結局来るのか来ないのかわからない。




もし来るつもりだった、なんて
入れ違いになったら良心が痛む。








なんて考えながらお店を出ると、
「おつかれー」と呑気な声。


お店の横の壁に凭れていた佐藤くんは
雑誌が入った袋を持った方の手をひらひら降ってる。






「どのくらい待ってたの？」

佐藤「ちょっと前に来たばっかだよ〜。
私服のAさんも可愛いね」

「雑誌買ったんだ」

佐藤「これは寄り道したついで。
てか俺今口説いたんだけど。スルー？」





ねぇねぇ、と猫みたいにすり寄ってくる。


こういう相手は本気にした瞬間
絶対大変な思いをすると本能が悟ってるので、

ゆっくりと距離を開けて「聞いてなかった」と答えた。



佐藤くんは傷つく素振りも見せず
「そっかぁー」とだけ。





「佐藤くんは電車通学？」

佐藤「うん。Aさんは？」

「私もだよ」

佐藤「じゃぁしばらく一緒だね〜うれし！」

「反対ホームにならないといいね」

佐藤「何言ってんの。ちゃんとお家まで送るよ」

「何を言ってるの？」





年下の、ましてや高校生のくせに
口からぽんぽん女の子慣れした言葉ばかり飛んでくる。


ガチトーンで返してしまう私に
佐藤くんは うはは〜 と楽しそうに笑った。



…割と冷たい態度にしてるつもりだけど、
本当に楽しそうなんだよな。この人。




彼は私の歩幅に合わせてくれていて、

彼の一歩が私の二歩。


だから悠々と歩いてるように見える。





「今さらだけど、こんな時間になってたら
親御さん心配するんじゃない？」

佐藤「俺だいたいこんくらいまで遊んでるから普通だよ。
Aさんこそ心配されるでしょ。女の子だし」

「ひとり暮らしだからそこら辺はないかな」

佐藤「え！行きたい！」

「だめです」

佐藤「え〜いいじゃん！何もしないから！」

「何もしない人はそもそも『何もしない』とは言わないんだよ」

佐藤「Aさんってたまに一休さんみたいだよね」






ふふ、と笑って私を見つめる目が優しくて、甘い。


こりゃーもう同級生の女の子たちは
メロメロになってしまうだろう。



年下のことを忘れてしまいそうなくらい大人びている。









「佐藤くんって彼女いないの？」








素朴な疑問をぶつけてみると、

佐藤くんは目をぱちくりさせる。





背が大きいのに子りすみたいな反応するんだな。







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